経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
経済学

【経済学】比較優位|価格比が変わる場合の問題の解法

リカードの比較生産費説に基づいて,2国A,Bおよび2財x,yからなる経済を考える。生産要素は労働のみであり,各国における各財1単位当たりの生産に必要な労働量は以下の表のように示される。また,2財x,yは両国間で自由に取引され,国際市場は競争的であるとする。両国間で労働の移動はないものとする。

このとき,次の2財の価格比($P_x/P_y$ )の組合せのうち,いずれの価格比も両国間に貿易が生じる範囲内にあるものはどれか。ただし,2財x,yの価格は,それぞれ$P_x$,$P_y$である。          【国家一般職。平成27年度】

1.$\frac{1}{2}, \frac{3}{2}$

2.$\frac{1}{2},2$

3.$\frac{2}{5}, \frac{6}{5}$

4.$\frac{2}{5}, \frac{7}{3}$

5.$\frac{3}{4}, \frac{5}{3}$

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

【経済学】経済学のまとめ 経済学の基本的な考え方について説明しました。 経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。 ...

貿易しない場合の価格比

貿易をしない場合、市場価格と平均費用(一つ生産するのにかかる費用)は等しくなります(理由は後述)。

まずA国について考えます。x財の価格$P_x$はx財の平均費用に等しいため、賃金を$W$とすると、$4W$(1単位当たりの労働量×賃金)となります。同様に、y財の価格$P_x$は$6W$になります。このため、下記の式が成り立ちます。

$ \frac{P_x}{P_y}=\frac{4}{6} =\frac{2}{3} $

同様の計算をB国について行うと、以下の式が成り立ちます。

$ \frac{P_x}{P_y}=\frac{10}{5} =2 $

貿易後の価格比

貿易を始めると、価格比は両国で等しくなります。

A国に関し、y財に比べてx財の価格が高くなるとどうなるでしょうか?企業は、利潤を得ることになり(理由は後述)、x財ばかりを生産するようになるでしょう。価格比でいえば、下記が成り立つ場合です。

$ \frac{P_x}{P_y}> \frac{2}{3} $

反対に、価格比が$2/3$よりも小さい時はy財ばかりを生産するようになるでしょう。

同じことはB国についても言えます。x財の価格が高くなるとすべての企業がx財ばかりを作るようになるでしょう。

$ \frac{P_x}{P_y} > 2 $

価格比が2以上の場合、A国でもB国でもx財ばかりを作ることになり、これでは貿易は成り立ちません。ということは、B国はy財ばかり作るような価格比でないといけないことになります。

両者を合わせると、以下になります。

$    \frac{2}{3}<\frac{P_x}{P_y}< 2$

国際的な価格比がこの間にあれば、貿易が行われることになります。これを満たす選択肢は、5になります。

(参考)なぜ価格は平均費用になるか?

完全競争市場の場合、企業が利益の最大化を行うと、限界収益=限界費用が成り立ちます。限界収益は1個当たりの収益なので、市場価格です。つまり、市場価格と限界費用が等しいことになります。

この状態だけだと、利潤が発生するので新規参入企業が出て、市場価格は、限界費用平均費用が等しくなるところまで低下します。そこで、市場価格は平均費用に等しくなります。

(参考)なぜ利潤がでるのか?

国内で達成された価格よりも、x財に高い価格が付くということは、x財は平均費用よりも高い収益が得られ、利潤が発生します。企業はみんな、x財を生産することになるでしょう。x財の生産に特化した状態です。

同様の問題

H国とF国がパイナップルとメロンを生産している。1単位当りの生産に必要な労働投入量はH国ではパイナップルについては6単位、メロンについては12単位であるのに対して、F国ではパイナップルについては12単位、メロンについては9単位である。このとき、H国とF国が自由貿易を行つたときに、両国がそれぞれ異なる財に完全特化したとすると、メロンで測つたパイナップルの国際相対価格の範囲として、正しいものはどれか。(経済学検定 第16回国際経済)

1.$\frac{1}{2}< \frac{4}{3}$

2.$\frac{3}{4}<2$

3.$\frac{1}{2}< \frac{3}{4}$

4.$\frac{4}{3}<2$

まず、表を作ります。

パイナップルメロン
H国612
F国129

必要なのは、メロンで測ったパイナップルの相対価格$p$です。

H国について、完全競争が成り立っているとすると、価格=平均費用となります。平均費用は、生産1単位当たりの費用なので、賃金をwとすると、パイナップルは$6w$、メロンは$12w$となります。このため、メロンで測ったパイナップルの価格$p_H$は$6/12=1/2$となります。

同様に、F国の場合、メロンで測ったパイナップルの価格$p_F$は、$12/9=4/3$となります。

貿易が行われて、両国の価格が$p$になったとします。H国について$p>1/2$の時、パイナップルの価格が相対的に高いので、利潤が発生し、企業はパイナップルばかりを生産するようになるでしょう。反対に$p<1/2$なら、メロンばかりを生産します。

F国の場合、$p>4/3$の時、パイナップルばかり生産し、$p<4/3$の時、メロンばかり生産することになります。

この条件で、両国がそれぞれの財に特化して、しかも貿易が行われるのは、$1/2<p<4/3$の時です。

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