自由貿易のメリットの、基本的な理論を解説します。保護貿易はよくない、という論調はよく聞きますが、なぜ自由貿易の方が良いのかという根拠を示します。
自由貿易は、消費者にとって確実にメリットがあります。国内では割高な財が安く手に入るからです。
一方で国内で競合製品を作っている生産者にとっては脅威になるでしょう。何らかの対策を打つ必要はあります。
しかし、自由貿易をした方が、国全体としてはメリットが多いので、保護貿易はよくない、自由貿易推進、というのが経済学の結論です。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
貿易の効果
自由貿易の効果について、需要曲線と供給曲線を使って考えていきます。議論を明確にするために前提を置いています。この前提がないと結論が変わりますが、それほど無理のない仮定です。国内財と外国財の質が同じというのは、国産品重視の現状には合わないかもしれませんが、そこは別の機会の議論としてください。
また、自由貿易とは、関税や数量割り当てなど、政府が貿易に介入しない状態を表します。
- 小国の仮定。対象財の価格は国際的に決まっていて、その国はその価格を受けいれる。
- 国内の財も海外の財も質は同じだと考える。
国内で決まる価格に比べて、国際価格が高い場合は輸出し、国際価格が低い場合は輸入します。以下では輸入する場合に考えます。
具体的な例として、牛肉について考えることにしましょう。牛肉の国内価格よりも国際価格の方が安い場合です。
貿易が始まり、牛肉の価格が下がると、消費者はたくさん買い、国内の生産者は生産する量を減らすでしょう。需要と供給の差が輸入量となります (図1)。消費者は牛肉の価格が下がったことでたくさん牛肉を食べられるようになり、生産者は生産量を減らすことになります。国内生産者は、海外の生産者に対して良い感情は持たないかもしれません。
社会的余剰はどうなる?
ミクロ経済学の知見を使って、自由貿易の影響について分析してみましょう。
需要曲線と価格線に挟まれた部分は消費者余剰、供給曲線と価格線に挟まれた部分は生産者余剰と呼ばれ、両者を合わせたものは社会的余剰と呼ばれます。
貿易がない場合の社会的余剰は、図2の青い部分、A+B+Xです。消費者余剰がA、生産者余剰がB+Xとなります。
一方、貿易をすると、価格が下がります。消費者余剰は、A+B+Yとなり、BとYの分だけ増えます。
一方で、生産者余剰は、Xのみになります。Bの分だけ生産者余剰は減ります。
消費者余剰と生産者余剰を加えた社会的余剰は、貿易をしなかった場合に比べてYの分だけ増えることになります。
生産者余剰減への対策
貿易の結果、社会的余剰が増えます。しかし、消費者余剰は増える一方で、生産者余剰は減ります。全体としては増えるわけですが、政府としては、消費者余剰の一部を生産者に還元する(補償をするなど)必要があるかもしれません。
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