経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
統計学・計量経済学

【計量経済学】RCT(ランダム化比較実験)|因果関係把握に最適

経済分析では、因果関係を把握する必要がありますが、原因と結果を判別するのは難しい課題です。

RCTは最も望ましい調査法です。もともと新薬の検証などに使われていた手法ですが、最近では経済の分野でも頻繁に使われます。

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

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政策効果の把握に最も望ましいのはRCT

RCT(randomized controlled trial)ランダム化比較実験(試験)と訳されます。内閣府の資料によると、政策効果の評価手法として最もエビデンスの質が高いのがRCTとされています。

(出所)内閣府(2018)「平成30年度内閣府本府EBPM取組方針」をもとに作成

RTCでわかること

後で紹介するアンドリュー・リー著「RCT大全」では、一見して正しいそうな、以下の事柄が誤りであることがRCTでわかったとしています。

  • 背中がひどく痛むなら、X線検査で問題を特定できる。
  • 早すぎる妊娠を予防する策として、10代の少女に赤ちゃん人形を与えて育児を体験させる。人形は四六時中何らかの世話をするようプログラムされている。
  • 放課後プログラムは、問題を抱えた子どもをサポートする絶好の手段。
  • マイクロクレジットで世界の貧困問題を解消できる。
  • 開発途上国の人々の昆虫媒介感染症対策として、寝室に蚊帳を導入させたいなら、蚊帳を無償で与えるのではなく、有償での購入を求める。その方が蚊帳に対して価値を感じるため。

RCTの概要

RCTの仕組みは比較的簡単です。たとえば、新薬の効果があるかを調べる場合を例にすると、患者を二つのグループに分けます。

ランダムに2つのグループに分けることがポイントです。ランダムでない方法であれば、グループ間に何らかの偏り(バイアス)が生じるためです。

一つのグループを介入群として、薬を投与します。もう一つのグループを対照群として薬を投与しないか、偽の薬(プラシーボ、プラセボ)を投与します。

その後、改善したかどうかを確認し、改善率に有意に差があれば新薬に効果があったと結論づけます。

英語合宿の例

ランダムに分けるというのは結構大変なことでもあります。

たとえば、学校で実施されている英語合宿(英語の能力を高めるための合宿)に効果があるかどうかを調べる場合です。

英語合宿に行くかどうかを生徒が決める場合、合宿後、英語合宿に行った学生の成績が伸び、行かなかった生徒の成績が伸びなかったとしても、合宿に効果があったとは言い切れません。

英語合宿に行こうと思った学生は、もともと英語が好きか、英語の成績を伸ばそうと思っていた学生の可能性が高いです。合宿に行かなくても、英語の成績が上がっていた可能性があります。

では、RCTではどのようにするのでしょうか。

まず、クラスの生徒をランダムに2グループに分けます。そして、一つのグループは英語合宿に行き、もう一つのグループは行かず、その後英語の試験をして、合宿に行った学生の成績が上がっていたら、英語合宿に効果があったことになります。

ランダムで実験するのは結構大変ですね。

葉山町の例

さまざまな統計利活用を紹介したサイトとして、地方公共団体のための統計利活用サイト(Data StaRt)があります。毎年、「Data StaRt Award」で優れた統計利活用を行った地方公共団体を表彰していますが、葉山町がRCTを使った政策は、第4回(2019年)の総務大臣賞を受賞しています。

ごみ収集ステーションが散らかる

葉山町の課題はごみ収集ステーションでは、「収集後の後出し」や「ごみの分別間違い」が問題になっていました。それを解決する方法として、

  • チラシのポスティング
  • 収集終了の看板

が考えられました。そして、この2つに効果があるかをRCT(ランダム化比較実験)で検証しました。チラシのポスティングをするグループ、収集終了の看板を出すグループ、何もしないグループの3つに分けていますが、どの対策を行うかをくじ引きで決めたところがポイントです。

効果がが実証された

その結果、チラシ看板も効果があることがわかりました。ただ、効果には違いがあることもわかりました。

まず、「アルミは金属類ではありません」というチラシを配ることにより、対策前半には効果が出ましたが、後半には効果が弱くなったことがわかります。

「埋め立てごみはプラスチックごみではありません」というチラシの場合は、前半は、ほかのチラシとまぎれて効果が低かったですが、後半に効果が出ました。

看板の効果は、モニタリング期間の後半でも弱くならず、効果に持続力があることがわかりました。

参考文献

貧乏人の経済学

ノーベル経済学賞を受賞したバナジーとデュフロの本です。RCTで以下の事を明らかにしています。

  • •灌漑施設の建設が地域の経済発展に与える効果を評価するために,灌漑施設を整備する地域をくじによって決めることで,外的条件の似た地域どうしの比較を可能にしたうえで政策の効果を評価
  • •小規模金融(マイクロ・ファイナンス)を実施する際に利子率を優遇する制度と,連帯保証制度とで返済率が高いのはどちらかを評価

バナジー・デュフロ(2011)『貧乏人の経済学―一もういちど貧困問題を根っこから考える』山形浩生訳、みすず書房

RCT大全

冒頭でも事例を紹介しましたが、一冊すべてRCTに関する本です。

「原因と結果」の経済学

因果推論を学ぶうえで、基本的な書物です。

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計量経済学の第一歩 実証分析のススメ

計量経済学の教科書ですが、因果推論の分析を中心に書かれています。

まとめ

この記事では、RCT(ランダム化比較実験)についてまとめました。

グループをランダムに2つに分けて、一方には新薬を投与したり、政策を実行したりします。てもう一方には何もしないことで、新薬や政策の効果をみるというものです。

グループを分ける際には、地域で分けたり、志願者を募ったり、属性で分けたりということが行われがちですが、セレクションバイアスが発生して明確な結果が得られません。

ランダムに2つにわけることがポイントで、また実行する際には難しいところでもあります。

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