東京財団政策研究所のホームページに私のレポートが掲載されました。緊急事態宣言などの人流抑制策が実質GDPをどのくらい押し下げたかについて調べました。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
「はじめに」を引用すると以下の通りです。
本稿では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が人流や実質GDP(国内総生産)にどのような影響を与えたかを分析した。新型コロナウイルスの感染拡大以来、緊急事態宣言は3回発令され、まん延防止等重点措置は2021年4月に初めて発令されて以降断続的に続き、2022年3月にすべての都道府県で解除された。
緊急事態宣言などの効果を分析するには、都道府県別のデータが必須である。感染状況や抑制政策の強さは、都道府県別に異なるためである。また、経済活動に関して分析する際、望ましいのはGDPを使うことである。そこで、都道府県別実質GDPを推計(推計法は山澤 2022参照)して、パネルデータ(時系列データと横断面データの両方があるもの)で効果を検証することとした。都道府県別月次実質GDPについては、2022年11月17日付けReview「都道府県別月次実質GDPの作成とその意義」でも紹介した。先行研究では、経済活動の変数として失業率が使われていたが、本研究では経済活動の包括的な指標であるGDPを使っているところが新しい点である。
この分析では、都道府県別に日次ベースで発令日を数えて、1ヵ月当たりの発令率を計算した。この指標を使うことで、各都道府県の発令動向が把握できる(図表1)。
2020年4月から5月にかけて発令された第1回緊急事態宣言は、発令内容も厳しく、経済活動は大きく停滞した。第2回2021年1月から3月の発令では対象都道府県が絞られた。第3回緊急事態宣言は2021年4月に発令された後、延長が繰り返され2021年9月まで続いた。2021年9月は最も高い発令率になった。まん延防止等重点措置は、2021年4月から断続的に発令された。2021年9月に発令が停止したが、2022年1月から3月にかけて、幅広い地域で発令された。