インフレは物価の継続的な上昇で、デフレは物価の継続的な下落です。いずれも、お金の価値が安定していないことを表すので、国民生活の大きな不安材料となります。物価が下がるデフレは一見良いことのように思えますが、さまざまな問題があります。
デフレでは、値段が下がってモノがたくさん買えそうですけど。
一番問題なのは、貧富の差が広がることですね。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
インフレはなぜ問題か
物価が継続的に上昇するということは、同じお金を稼いでも買えるものが少なくなることを意味するので、人々の生活を苦しくさせる原因となります。
毎日使う小遣いが1000円だったとしましょう。お昼の定食が500円であれば2回分食べることができます。しかし値上がりして定食が1000円になれば1回しか食べられません。モノの値段があがると、同じお金を持っていても実質的に使う量は減ってしまいます。これが物価上昇の問題点です。
多少の物価上昇ならたいした影響はありませんが、インフレは時に火が付いたように高くなります。第一次世界大戦後のドイツ、第二次世界大戦中のハンガリーやギリシャ、1990年前後のブラジルでは何千%も物価が上がりました。消費者物価上昇率が100%上昇するというのは、前の年の同じ時期に比べて値段が倍になることを意味しています。それをはるかに上回って、何十倍にも値段が上昇したということです。物価が毎日上がるような状況は、現実にあるうることです。
インフレはなぜ起こるのか
インフレが起こる理由としては、大きく分けて需要側が原因の場合と供給側が原因の場合があります。需要曲線、供給曲線で考えると、供給曲線がシフトする場合がコストプッシュインフレ、需要曲線がシフトする場合がディマンドプルインフレです。
コストプッシュインフレ
コストプッシュインフレは、コスト(費用)が増えることによっておこるインフレです。代表的な例は、原油価格の上昇です。原油価格が上昇すると、それを利用している商品の値上げ圧力が働きます。また、人出不足で人件費を上げる必要があると、それを価格に転嫁しようとしてインフレが起こる場合もあります。
ディマンドプルインフレ
ディマンドプルインフレは、需要側の要因で起こるインフレです。所得が増えるなどの要因で、これまでよりも国民全員がもっと消費しようという気持ちになったとします。そうすると、それぞれの商品への需要が高まるので、価格が上昇します。こうしてインフレが発生する場合をディマンドプルインフレと呼びます。
デフレはなぜ問題か
デフレは一見消費者には好ましいもののように思えます。値段が下がるわけなので、同じ所得であればものがたくさん買えるようになります。しかし、値段が下がるということは、消費者がモノを買いたがらないという状況で、景気が悪くなっていることの裏返しです。
また、資産に着目したときにもデフレは問題があります。多くの資産を持っている人はデフレによって実質的な資産の価値が上がります。一方、借金(負債)を持っている人はデフレによって負債の価値が上がり、借金が実質的に増えてしまうことになるのです。貧富の差が拡大します。
金融政策でも問題が出てきます。金利は経済活動に大きな影響を及ぼしますが、実質金利(名目金利-物価上昇率)はデフレによって上がってしまいます。名目金利が高いうちはそれを下げていけば実質金利を下げることはできますが、名目金利がゼロになってしまうと、それ以上金利を下げられません。日本のゼロ金利政策下では実際にこうした問題が起こりました。
スタグフレーション
景気とインフレはトレードオフとして扱われることが多いです。景気が良くなる時には物価が上がることが多いためです。経済政策を考える場合も、景気が過熱した場合それを冷やす必要があるのはインフレ懸念が大きくなるためです。
しかし、時には、景気後退とインフレが同時に起こるという最悪の事態も訪れます。これがスタグフレーションという状態で、スタグネーション(停滞)とインフレーション(物価の継続的上昇)が同時に起こることをいいます。1970年代に世界全体で起こった現象で、少なくともどちらか一方は改善できると思っていたのに、両方悪くなる事態が生じてしまったため、経済学に対する信頼が失われてしまいました。