物価動向を消費者物価指数(CPI)の総合指数のみで判断すると誤った分析につながります。景気の強さをみるためには、コアCPIやコアコアCPIを見るのが適当です。
コアCPIは、天候要因に左右されやすい生鮮食品を除いたもの、コアコアCPIは、酒類を除く食品とエネルギー関連商品を除いたものです。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
消費者物価指数(CPI)とは
消費者物価指数は、消費者が購入する財やサービスの価格について、基準年を100として指数化したものです。約800品目を調べて計算したもので、月次で得ることができます。
最近は原油価格の上昇や円安で、総合指数が上昇していますが、本当にインフレ圧力があるのかどうかは、景気と無関係に決まるものを除いたコアCPIやコアコアCPIで判断すべきです。
グラフは総務省の統計ダッシュボードから見られます。
コアCPIとコアコアCPI
コアCPIー生鮮食品を除く
消費者物価で重要なのは、コアCPIと呼ばれるものです。生鮮食品を除いた総合指数のことです。生鮮食品は、作物の取れ具合によって大きく変動しますが、日本全体の経済活動とは関係ない場合が多いです。そこで、物価の基調判断をする場合は除いて考えます。
生鮮食品の比率は4%なので、コアCPIがカバーする商品は96%になります。
コアコアCPIー食品(酒類を除く)とエネルギーを除く
原油価格などのエネルギー価格も国内景気と無関係に決まるため、生鮮食品とエネルギーを除いた指数も景気判断に用いられます。これには特に名前はついていません。
そのほか、食品(酒類を除く)とエネルギーを除いたコアコアCPIも計算されています。コアCPIとコアコアCPIの違いはエネルギー価格が入っているかどうかと、食品の扱いの違いです。
コアCPIの場合は生鮮食品のみを除きますが、コアコアCPIの場合はそれより幅広い食品全体(酒類を除く)を除いています。それらのウエートは以下の通りです。コアCPIは品目ウエートで96%ですが、コアコアCPIになるとウエートでは68%になります。
下の表は、全体を10000とした時のそれぞれの項目のウエートです。
項目 | ウエート |
総合 | 10000 |
コアCPI | 9604 |
コアコアCPI | 6781 |
生鮮食品 | 396 |
食品(酒類を除く) | 2507 |
食品 | 2626 |
酒類 | 119 |
エネルギー | 712 |
寄与度分解
消費者物価指数の分析で重要なのは、どのような品目の影響で物価が上昇または加工しているかです。また、品目ごとの伸び率だけでは、物価全体に対する影響度がわかりません。そこで寄与度を使います。寄与度は、総合指数の伸び率に対して、ある品目がどの程度寄与していたかがわかるものです。ある品目Aに関する伸び率の寄与度は以下の式で計算できます。
$ 寄与度=\dfrac{ (Aの当月の値-Aの前年同月の値) * \frac{Aのウエート }{総合指数のウエート(10000) } }{ 総合指数の前年同月の値 } $
最近の動き
2022年10月までの消費者物価指数の伸び率を寄与度分解しました。コアコアCPIに含まれる情報通信関係費が、携帯電話通信料の値下げで大きく低下していましたが、10月にはその影響がなくなりました。エネルギー、食品の値上げの影響が大きいですが、コアコアCPIも徐々に上がりつつあります。
ウエート表など
寄与度分解する場合には、品目別にウエートが必要になります。また、単純にそれぞれの品目がどの程度のウエートを持っているのかを調べるのは面白いものです。ウエートなどは以下の資料に載っています。
総務省統計局2020年消費者物価指数の解説
総務省統計局大まかなウエート
総務省統計局細かいウエート