経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
経済指標

建設工事受注動態統計ー何が問題だったか

建設工事受注動態統計の二重計上が問題になりました。この不正問題についてまとめておこうと思います。

国土交通省が、調査票の不適切な取扱いを指導して結果的に二重計上が生じ、受注額が水増しされました。

その修正金額は年間最大で5兆2000億円程度にのぼります。

国内総生産(GDP)への影響はそれほど大きくなく、2021年度で0.1%上方修正された程度でした。

建設工事受注統計とは

建設工事受注動態統計は、土地造成や道路、鉄道など土木工事や病院、娯楽施設など建築工事の統計を合わせたもので、重要な統計である基幹統計の一つです。

建設工事受注動態統計建設総合統計を作る際の元データになります。建設総合統計についてはこちら

建設総合統計は、GDP統計の公的資本形成や民間企業設備投資を作る際の元データになります。このため、建設工事受注動態統計の数字が修正された場合、GDPの数字へも影響します。GDPへの影響の仕方は、速報値と年次推計値では違います。

  • (速報)建設工事受注統計→建設総合統計→公的資本形成、民間企業設備投資
  • (年次推計)建設工事受注統計→建設総合統計→設備投資(総固定資本形成-公的資本形成ー民間住宅投資)

何が問題か

不適切な手続きについて説明します。4月と5月の受注データの場合を考えます。以下の手続きが問題となりました。

「4月分を集計した後、建設業者から送られてきた4月分のデータを、5月分と合算して、5月分のデータとした」

ということです。正しくは、4月分のデータを4月分として集計し直し、5月分は5月分と発表するということになります。

4月分が5月分に移動しただけなら、4月と5月の数字はおかしくなるけれど、四半期や年間の数字には影響なさそうですが、そういうわけではありません。

建設工事受注統計は標本調査なので、建設業者から回収した数値をもとに、日本全体の数値へと膨らませています。調査対象となっているのに4月分のデータを提供しなかった建設業者の受注額は、4月に回収できた建設業者の受注額の平均値として計上されます。5月には4月、5月分のデータが計上されるため、4月に計算された分が二重計上になります。

4月5月
本来4月分5月分
不正処理回収データの平均値(この部分が2重計上)4月分と5月分

統計不正の影響

建設工事受注動態統計は、2022年8月に遡及修正されました。その詳細は、以下の検討会議の資料にあります。不適切処理による遡及改定の影響は、元請と下請計で最大5兆2000億円程度(2015年度、2016年度)にのぼっています。

建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る遡及改定に関する検討会議

(出所)建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る遡及改定について

建設工事受注統計の不適切処理のGDPへの影響は、内閣府が公表しています。2020年度が0.1%、2021年度も0.1%分の上方修正になりました。2017年度以前は、受注統計は使われていないため、GDPに影響はなく、その後は多少GDPを増やす方向に修正されています。

(出所)建設総合統計の遡及改定による影響について

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