経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
経済分析

【GDP】名目と実質|金額と数量の違い

経済変数には名目値実質値があります。違いは物価の影響を調整したかどうかです。単純に集計しただけのデータを名目値と呼び、物価を調整した指標を実質値と呼びます。景気動向を見るときは、実質値を使うのが基本です。

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

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名目値の問題点

なぜ実質値が必要なのでしょうか?

それは名目値だけでは、価格の動きに惑わされて経済の動きが把握できないためです。

価格が変わらない場合

リンゴだけを生産している国があるとします。1年目に1個生産し2年目に3個生産すると、生産量は3倍となります。リンゴの価格が100円で買わなければ、生産額は100円から300円と3倍になります。これが名目値です。

生産個数価格生産額(名目値)
1年目1100円100円
2年目3100円300円
価格が変わらない場合

価格が上昇した場合

2年目に値段が200円に上がると、生産額は600円になります。生産量は1個から3個に増えただけなのに、生産額は6倍になるということです。名目金額だけをみると、生産量を見誤る可能性があります。

生産個数価格生産額(名目値)
1年目1100円100円
2年目3200円600円
価格が上昇した場合

価格が下落した場合

反対に2年目に価格が100円から30円に低下すると、生産額は90円になります。生産量は増えても、生産額は減るということになります。

生産個数価格生産額(名目値)
1年目1100円100円
2年目330円90円
価格が下落した場合

いかがでしょうか?一番右側の生産額(名目値)だけ見ていたら、実際の経済活動である、「リンゴの生産が1個から3個に増えた」という事実が確認できないことがわかると思います。このため、価格の影響を除いた実質値を計算する必要があります。

実質値の計算法

実質値の計算法をGDPで見てみましょう。現在の価格でGDPを出したものを名目GDPと呼びます。これに対して、物価の変動分を調整したGDPを実質GDPと呼びます。経済活動を示すにはこちらのほうが適しています。

実質GDPには基準年があります。現在の実質GDPは2011年基準ですが、これは2011年の値段でみた現在のGDPの活動水準ということになります。計算式は次のようになります。

GDPデフレーターは、日本全体の物価水準を表します。2020年基準の実質GDPを算出するには、2020年を100としたGDPデフレーターを使います。

実質GDP=名目GDP/GDPデフレーター×100

 景気動向をつかむときは、物価の影響を除いた実質値でみるのが基本です。ただ、企業の売上高や経常利益は名目変数であり、それらの動きが企業の景況観を左右するため、名目値の動きも合わせてチェックすることが重要です。

実質GDPはどうなる?

それでは最初のリンゴの例に戻りましょう。実質生産額は名目値を価格で割って求めます。1年目を基準年とします。2年目の実質生産額(GDP)を求めることにしましょう。

価格が変わらない場合

GDPデフレーターは100なので、300円÷100×100=300円です。

生産個数価格生産額(名目値)GDPデフレーター生産額(実質値)
1年目1100円100円100100円
2年目3100円300円100300円
価格が変わらない場合

価格が上昇した場合

GDPデフレーターは200に上昇しています。600円÷200×100=300円です。

生産個数価格生産額(名目値)GDPデフレーター生産額(実質値)
1年目1100円100円100100円
2年目3200円600円200300円
価格が上昇した場合

価格が下落した場合

GDPデフレーターは30に低下しています。90円÷30×100=300円です。

生産個数価格生産額(名目値)GDPデフレーター生産額(実質値)
1年目1100円100円100100円
2年目330円90円30300円
価格が下落した場合

いずれの場合も、生差額の実質値は100円から300円になっています。これは生産個数の動きを反映したものになっており、実質値は生産量の実態をよりよく表すことがわかります。

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