経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
GDP

GDPギャップー物価への上昇圧力がわかる

GDPギャップという言葉が、新聞などで使われる場合がありますが、わかりにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。内閣府や日銀が計算しているもので、そもそも「統計」ではないからです。

「景気動向を表す」ものということを理解していればOKですが、さらに詳しく知りたい人ために、GDPギャップに関する基本的な知識を解説します。

月例経済報告で報告

景気動向を示す指標の一つとしてGDPギャップ(需給ギャップ)があります。GDPは現実の生産活動を表しますが、それが平均的なGDPの水準とどの程度かい離しているかを表すものです。需要(実際のGDP)と供給(潜在GDP)の差は景気判断としても重要です。

内閣府は四半期に一回今週の指標として発表しており、月例経済報告でも報告されています。

需給ギャップはインフレの要因としても重視されています。日本銀行はGDPギャップを独自に計算しており、金融政策の参考にしています。

GDPギャップとは

GDPギャップは次の式で計算します。実際のGDPは需要を表し、潜在GDPは供給能力を表すので需給ギャップとも呼びます。

$ GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP $

このグラフを描くと、景気の変動と同じように動きます。また、GDPギャップがプラスの時は、需要の方が強いので物価に上昇圧力が働きます。一方GDPギャップがマイナスの時にはデフレ圧力が働くことになります。

月例経済報告のサイトから、内閣府の推計したGDPギャップや潜在GDPのデータを入手することができます。

潜在GDPとは

潜在GDPの考え方は、2種類あります。一つは、供給能力の最大値を出すというものです。失業者も全部働き、過去最高時と同じくらい残業し、生産設備をフル稼働させたときのGDPを計算する方法です。本来はこちらが潜在GDPでしょうが、統計としてはあまり使われません。

もう一つは、労働力や生産設備を過去の平均的な水準で稼動させたGDPという考え方です。就業者数、残業時間、生産設備などの過去の平均水準から求めます。

景気判断やインフレの判断として用いるときは、潜在GDP=平均的な水準と考えた方が、GDPギャップの意味がはっきりします。潜在GDPをフル稼働した場合と考えると、現実のGDPはそれを常に下回ることになります。

潜在GDPの作成法

潜在GDPは、生産要素別に推計するの場合が多いです。労働(就業者数×労働時間)、資本投入量、TFP(全要素生産性)に分けて推計するのが一般的です。

内閣府の推計法については、経済財政分析ディスカッションペーパー(DP/17-3)に載っています。

内閣府の推計した潜在GDPは以下の通りです。2020年以降の労働投入量は2020年4-6月以降は仮置き、全要素生産性の2022年1-3月期はトレンド推計です。

パン屋の例では…

パン屋を考えて見ましょう。パン屋で働いている人が普通に働き、パン焼き器も普通に使って生産できるパンの量が潜在GDPを表します(潜在GDP=平均値と考えた場合)。しかし、あまりお客さんが来ない時は、働く時間を減らしたり、パン焼き器の稼働時間を減らしたりして、売れそうな分だけ焼くでしょう。これが現実のGDPにあたります。

パンをたくさん作る能力があるのにお客さんがあまり来ないというのは、GDPギャップがマイナスの場合です。設備や労働力が余るので効率的ではありません。いつまでたってもお客さんがいっこうに増えないとしたら、お客さんを呼び込むために値段を下げる必要が生じてきます。また、アルバイトを雇うのを止めてもやっていけるかもしれません。こうして物価が下がったり、雇用者が減ったりします。これが不況にあたります。

逆に作る量を超えてお客さんが殺到する場合もあるでしょう。これがGDPギャップがプラスの場合です。値段を上げても買う人がたくさんでてきます。この場合は、生産能力を上げるために新たなパン焼き機を買うことも考えられます。これは設備投資を増やすことに当たります。

最近の潜在GDPは、0.5%近辺で推移していることがわかります。以前は潜在成長率は2%程度と言われていましたが、現在では0.5%成長すれば平均的な成長水準ということです。新型コロナ感染拡大の大きなマイナス成長を反映している面も大きいですが、いずれ、潜在成長率はマイナスになるでしょう。

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