日銀短観はニュースで大きく取り上げられますね。
景気を見るうえでは重要だし、わかりやすいですからね。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
経営者へのアンケート調査
日銀短観は、日本銀行短期経済観測の略です。英語でTNAKANと呼ばれるほど国際的にも有名な経済指標です。日本銀行のサイトから、詳細なデータを得ることができます。景気には、「気」の文字が入っていることでわかるように、経済の実体とともに気持ちの要素も含まれます。いくら取引が活発でも気持ちが上向いた状態にならないと「景気が良い」と言い切れません。日銀短観の業況判断DIは、経営者へのアンケート調査で、経営者の景気に対する気持ちを判断するうえで最適な指標です。
DIは簡単な引き算
GDPや景気動向指数は、実体経済の動きを客観的な数値で反映する統計ですが、経済の動きと人々の景況感がかい離することがあります。「GDPは増えていて、失業率は低いかもしれないが、景気がいいとは思えない」という状態もあります。この点で参考になるのが、日銀短観の業況判断DI(ディフュージョンインデックス)です。業況判断DIは、経営者に景気の現状を聞き、「良い」と答えた人の割合から「悪い」と答えた人の割合を引いたもので、景気の方向だけでなく、水準も表しています。景気を「良い」と思う人が60%、「悪い」と思う人が40%なら、DIは20となります。全員が良いと答えれば100、全員が悪いと答えれば0になります。直感的にもわかりやすい統計です。
$$ DI=「良い」と答えた企業の割合-「悪い」と答えた企業の割合 $$
景気動向指数でもDIという言葉が出てきますが、景気をあらわす指数ではありますが、計算法は違います。景気動向指数の場合は、「3ヵ月前に比べて改善した指標の割合」です。「DI」は、景気の波及を表す指標という意味で使われていて、計算法は統計によって違います。
業種別、規模別にも見ることができる
日銀短観は約1万社近くの企業にアンケートした調査で、細かい業種分類や規模別にもわけて統計をみることができます。その意味では有効な統計です。回収率が高いことでも知られていて、未回答企業には電話で督促するなどして、回収率を上げています。
業況判断DIにもいろいろな分類がありますが、大企業・製造業のDIが重要です。新聞ではこの分類が大きく採り上げられます。製造業は景気に敏感な業種が多く、影響力の大きい大企業の判断が重要なためです。
しかし、GDPの付加価値ウエートとしては非製造業が大きいため、非製造業の動きも重要です。また、中小企業を除く必要もありません。このため、全規模・全産業でみることも重要です。
企業規模の定義
大企業 | 資本金10億円以上 |
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中堅企業 | 資本金1億円以上10億円未満 |
中小企業 | 資本金2000万円以上1億円未満 |
見通しと実績の誤差も重要
短観では、景気の現状とともに、景気の先行きについても訪ねています。たとえば、9月調査であれば、12月の景況感の予想も同時に発表されます。
景気がよくなる時は、予想以上に景況感が良くなり、悪化する時は予想以上に景況感がわるくなる傾向にあります。
生産設備判断DIや雇用人員判断DIも有用
「業況判断DI」が注目されますが、そのほかにもさまざまな調査項目があります。企業が生産などに使う設備が過剰か不足かを聞いた「生産・営業用設備判断DI」(「過剰」-「不足」で表す)や、「雇用人員判断DI」(「過剰」-「不足」で表す)などがあります。設備投資計画も発表され、企業が先行きの設備投資をどの程度行うかの重要な判断材料となります。設備投資計画のデータで注意する必要があるのは、年度の初めには企業が慎重な計画をして、低めに出やすいことです。景気が良いときは調査時期が新しくなるとともに、投資計画も上方修正されます。ただ、景気が悪いときは、年度初めの慎重な見通しよりもさらに悪くなる場合があります。
さまざまな判断項目
業況 | 景気がよいかどうか |
---|---|
国内での製商品・サービス需給 | 需要が多いかどうか |
海外での製商品需給 | 海外からの需要が多いかどうか |
製商品在庫水準 | 在庫の判断 |
生産・営業用設備 | 設備が過剰か不足か |
雇用人員 | 雇用が過剰か不足か |
資金繰り | 資金繰りが楽か苦しいか |
金融機関の貸出態度 | 銀行から借り入れしやすいかどうか |
借入金利水準 | 借り入れ金利の水準は高いかどうか |
販売価格 | 販売価格が高いかどうか |
仕入価格 | 仕入価格が高いかどうか |
経常利益や設備投資の見通しも
DI以外にもさまざまな事柄を聞いています。経常利益や設備投資の年度見通しもわかるので参考になります。見通しなので、ぴったり当たるわけではないですが、年度当初からの動きをみることで、その年度の業績が上向きなのかした向きなのか、設備投資に前向きなのか慎重なのかなどがわかります。
年度計画の内容
売上高 | 損益計算書と同じもの |
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営業利益 | 海外での売上高 |
経常利益 | 損益計算書と同じもの |
設備投資額(含む土地投資額) | 設備投資の見通し |
想定為替レート | 輸出入をする際、為替レートをどのくらいに想定しているか |