政府の月例経済報告で、景気判断を「回復」に上方修正しました。これは2020年2月以来3年3ヵ月ぶりです。新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んでいた景気状況がやっとコロナ前に戻ったということです。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

政府の景気判断が改善
月例経済報告は、政府の経済判断を示すものとして重要です。詳しくは以下を参照してください。

2023年5月の景気判断が大きく変わりました。2023年4月は以下の判断です。
景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。
2023年5月には以下の判断に変わりました。
景気は、緩やかに回復している。
ポイントの一つは、「持ち直し」が「回復」に変わっていることです。月例経済報告に使われる言葉はある程度限定されていて、回復→拡大→弱含み→悪化→底入れ→持ち直しと循環します。そういう意味では、今年5月にステージが一つ上がったということになります。
ポイントの2つ目は、留保条件が付いていないことです。政府の判断は保守的なので、できるだけ逃げ道を付けた表現になります。
現在は良いけれどマイナス要因もあるよね、今後もし悪くなったしてもその要因は指摘してたよ。
みたいな気持ちです。このため、総括判断にはいろいろと留保条件が付きます。たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大直前の2020年2月は以下です。
景気は、輸出が弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増した状態が続いているものの、緩やかに回復している。
本当に回復しているのかな、という感じの文章です。しかし、2023年5月はこういう留保条件はありません。きっぱりと、「景気は緩やかに回復している」と言っていて清々しいです。「緩やかに」はついてますが。
これまでの判断
これまでの判断をみて、今回の判断の改定が久々だったことを確認しましょう。2020年3月にそれまでの「緩やかに回復」が「厳しい」に変化して以来の「緩やかに回復」です。「持ち直し」の期間が長かったですね。
景気動向指数 | 月例経済報告 | |
2019年1月 | 下方への局面変化 | 緩やかに回復 |
2月 | 〃 | 〃 |
3月 | 悪化 | 〃 |
4月 | 〃 | 〃 |
5月 | 下げ止まり | 〃 |
6月 | 〃 | 〃 |
7月 | 〃 | 〃 |
8月 | 悪化 | 〃 |
9月 | 〃 | 〃 |
10月 | 〃 | 〃 |
11月 | 〃 | 〃 |
12月 | 〃 | 〃 |
2020年1月 | 〃 | 〃 |
2月 | 〃 | 〃 |
3月 | 〃 | 厳しい |
4月 | 〃 | 極めて厳しい |
5月 | 〃 | 〃 |
6月 | 〃 | 下げ止まりつつある |
7月 | 〃 | 持ち直し |
8月 | 下げ止まり | 〃 |
9月 | 〃 | 〃 |
10月 | 足踏み | 〃 |
11月 | 〃 | 〃 |
12月 | 〃 | 〃 |
2021年1月 | 〃 | 〃 |
2月 | 改善 | 〃 |
3月 | 〃 | 〃 |
4月 | 〃 | 〃 |
5月 | 〃 | 〃 |
6月 | 〃 | 〃 |
7月 | 〃 | 〃 |
8月 | 〃 | 〃 |
9月 | 足踏み | 〃 |
10月 | 〃 | 〃 |
11月 | 〃 | 〃 |
12月 | 〃 | 〃 |
2022年1月 | 〃 | 〃 |
2月 | 〃 | 〃 |
3月 | 改善 | 〃 |
4月 | 〃 | 〃 |
5月 | 〃 | 〃 |
6月 | 〃 | 〃 |
7月 | 〃 | 〃 |
8月 | 〃 | 〃 |
9月 | 〃 | 〃 |
10月 | 〃 | 〃 |
11月 | 〃 | 〃 |
12月 | 足踏み | 〃 |
2023年1月 | 〃 | 〃 |
2月 | 〃 | 〃 |
3月 | 〃 | 〃 |
4月 | 〃 | |
5月 | 緩やかに回復 |