経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
経済統計

【経済統計】マネタリーベースのデータ取得|日銀のサイトから

金融関連の指標は、日本銀行のサイトにあります。量的質的緩和で重要な役割を果たす、マネタリーベースのデータをダウンロードする方法について紹介します。

経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。

【経済統計】経済統計一覧 経済指標を分野ごとにまとめています。 経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。 1.経済統計...

マネタリーベースは操作目標

月例経済報告の主要経済指標では以下のデータが使われています。日本銀行バランスシートとマネタリーベース、マネーストックのM2と銀行貸出です。

マネタリーベースは金融調節の操作目標になっています。黒田総裁は、就任直後の目標として、「2012年末に138兆円のマネタリーベースを2014年末に270兆円と、2年で2倍にする。」を挙げました。その後の政策は、量的質的金融緩和ーインフレ目標は達成できていないをご覧下さい。

後でデータをダウンロードして確認しますが、マネタリーベースは公約通り増えました。しかし、物価は上がりませんでした。その後、年間80兆円に目標に増加することが目標になりましたが同様です。2016年に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」になってからは、オーバーシューティング型コミットメントとなり、明確な目標金額がなくなりました。前年差での増加額は減っていきました。

マネタリーベースのデータの採り方

日本銀行の「時系列統計データ検索サイト」を使います。「主要指標グラフ」にはありません。「主要時系列統計データ表」の預金・マネーを選びます。

預金・マネーはマネタリーベース平均残高とマネーストックに分かれています。マネタリーベース平均残高を選びます。

マネタリーベースに関する表が、前年比と原数値の両方が出てきます。今回使うのはマネタリーベースの合計金額だけですが、左上のダウンロードを押すとすべてのデータがダウンロードできるので、エクセルの表をダウンロードします。

エクセルで検証

マネタリーベースのデータをダウンロードし、原数値のデータを使って前年差を計算します。マネタリーベースのデータを見ると、2012年12月(平均残高)は132兆円で、2014年12月(同)に267兆円になっており、目標通りマネタリーベースが増えたことがわかります。

次に、前年差をみてみましょう。2014年10月からは年間80兆円増加させることが目標になりました。これもおおむね守られていたでしょう。2016年にオーバーシュートコミットメントになってからは徐々に減っていました。新型コロナウイルスの感染拡大で、緊急融資が増えたため一時増えましたが、また減っています。

(出所)日本銀行

なぜマネタリーベースは重要か

日本銀行の最終目標は、「国民経済の健全な発展」です(下記日本銀行法参照)。

経済の健全な発展のを示すものの一つにGDPの拡大があります。ケンブリッジ方程式によれば、マネ―ストックを増加させることにより、GDPを拡大させることが出来ます。このため、マネ―ストックの増加量が中間目標として重要になります。

$名目GDP=マーシャルのk×マネ―ストック $

しかし、日本銀行は、マネ―ストックを直接コントロールできません。コントロールできるのはマネタリーベースです。マネタリーベースの貨幣乗数倍がマネ―ストックになります。

$ マネ―ストック=貨幣乗数×マネタリーベース$

このように、名目GDPの拡大に密接に関係するため、マネタリーベースが重要になるのです。

マーシャルのkや貨幣乗数が安定していれば、マネタリーベースのコントロールで名目GDPがコントロールできることになりますが、現実には変化しており、意図通りの政策が実現できない可能性があります。

(目的)

第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。

 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。

(通貨及び金融の調節の理念)

第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

日本銀行法

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