経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
統計学・計量経済学

【計量経済学】シグマ(和記法)の公式のまとめ|知っておくと便利

和記法は最小二乗法の単回帰分析でよく使います。

教科書では、いちいち説明してない場合も多いので、公式についてまとめておきます。

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

統計学・計量経済学のまとめ 統計学に関するまとめのサイトです。 教科書 「回帰分析から学ぶ計量経済学-Excelで読み解く経済の仕組み」 回帰分...

シグマの計算

基本的な計算

$ \sum\limits_{i=1}^n X_i=X_1+\dots + X_n $

定数の和

$ \sum\limits_{i=1}^n c= c+\dots+c=nc $

定数倍の和

$ \sum\limits_{i=1}^n c X_i= cX_1+\dots+cX_n=c \sum\limits_{i=1}^n X_i $

和のシグマはシグマの和

$ \sum\limits_{i=1}^n (X_i+Y_i)$

$ =(X_1+Y_1)+(X_2+Y_2)+\dots+(X_n+Y_n)$

$=(X_1+X_2+\dots+X_n)+(Y_1+Y_2+\dots+Y_n)$

$ = \sum\limits_{i=1}^n X_i+ \sum\limits_{i=1}^n Y_i $

偏差の公式

計量経済学でよく使う式の変形に、平均値($\bar{X}$)からの差である偏差を使ったものがあります。詳しい変形はこの記事の最後にあります。

  • 偏差の和

$ \sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})=0 $

  • 偏差の二乗和

$ \sum\limits_{i=1}^n (X-\bar{X} )^2=\sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X} )X_i$

  • 偏差の積和

$\sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})(Y_i-\bar{Y})= \sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X} )Y_i $

二重和(二重シグマ)の計算

二重和は、最初のシグマについて1から順に一つずつ取り出し、2番目のシグマについて足していくことを繰り返すものです。1変数で2つの属性を持ているもの(たとえば$X_{ij})$と2つの変数について適用する(たとえば$X_i$と$Yj$)場合がありますが、考え方は同じです。

  • i=1について j=1からm までの和
  • i=2について j=1からm までの和
  • i=nについて j=1からmまでの和
  • それらすべての和

基本的な計算(1変数の場合)

$\sum\limits_{i=1}^n \sum\limits_{j=1}^m X_{ij} $

$= \sum\limits_{i=1}^n (X_{i1}+ \dots +X_{im} ) $

$= ( X_{11}+\dots+X_{n1} )+\dots + (X_{1m}+ \dots + X_{nm} ) $

基本的な計算(2変数の場合)

$\sum\limits_{i=1}^n \sum\limits_{j=1}^m X_i Y_j $

$=X_1(Y_1+\dots+Y_n)+X_2(Y_1+\dots+Y_n)+\dots +X_n(Y_1+\dots+Y_m)$

順序を変えても同じ

$\sum\limits_{i=1}^n \sum\limits_{j=1}^m X_{ij}=\sum\limits_{j=1}^m \sum\limits_{i=1}^n X_{ij} $

積は分解できる

$\sum\limits_{i=1}^n \sum\limits_{j=1}^m X_i Y_j $

$=X_1(Y_1+\dots+Y_n)+X_2(Y_1+\dots+Y_n)+\dots +X_n(Y_1+\dots+Y_m)$

$=(X_1+\dots+X_n)(Y_1+\dots+Y_m)$

$=\sum\limits_{i=1}^n X_i \sum\limits_{j=1}^m Y_j $

シグマの二乗と二重シグマの関係

この式は結構使うのにあまり説明されていない気がします。左辺には$i$しかないのに、右辺になると$i$と$j$が出てきます。

$( \sum\limits_{i=1}^{n} X_i )^2=\sum\limits_{i=1}^n \sum\limits_{j=1}^n X_{i}X_j $

詳しく書くと

$( \sum\limits_{i=1}^{n} X_i )^2$

$=(X_1+X_2+\dots +X_n)(X_1+X_2+\dots +X_n)$

$=(X_1X_1+X_1X_2 + \dots + X_1X_n)+(X_2X_1+X_2X_2 +\dots + X_2X_n)+(X_nX_1+X_nX_2 + \dots X_nX_n) $

$=\sum\limits_{i=1}^n \sum\limits_{j=1}^n X_{i}X_j $ $(X_1+X_2+ \dots X_n)(X_1+X_2+ \dots X_n)$

偏差の公式を詳しく

  • 偏差の和

$ \sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X}) $

$ =\sum\limits_{i=1}^n X_i-n\bar{X}=0 $

  • 偏差の二乗和

$ \sum\limits_{i=1}^n (X-\bar{X_i} )^2 $

$ =\sum\limits_{i=1}^n (X-\bar{X_i})(X-\bar{X_i}) $

$ =\sum\limits_{i=1}^n ((X_i-\bar{X})X_i-(X_i-\bar{X})\bar{X}) $

$=\sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})X_i-\bar{X_i} \sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})$

$= \sum\limits_{i=1}^n\ (X_i-\bar{X})X_i $

  • 偏差の積和

$\sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})(Y_i-\bar{Y}) $

$=\sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})Y_i-(X_i- \bar{X})\bar{Y}) $

$=\sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X})Y_i-\bar{Y} \sum\limits_{i=1}^n(X_i-\bar{X}) $

$= \sum\limits_{i=1}^n (X_i-\bar{X} )Y_i $

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