株式投資をするための企業評価指標をまとめてみます。『企業評価論入門』をまとめた内容になっています。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
第2章 貸借対照表の分析 PBR
PBR
PBR(price book-value ratio:株価純資産倍率)は、純資産を基準に、株が何倍買われているかを表すものです。
$ PBR= \dfrac{株価}{BPS(1株当たり純資産)} $
エンタープライズバリューの計算
企業価値(エンタープライズバリュー)=株式時価総額+有利子負債‐現金
第3章 損益計算書の分析 PER
事業利益
企業全体で生み出した利益を示します。
事業利益=営業利益+受取利息+受取配当金+持ち分法による投資利益
EBIT
EBIT(earning before interest and tax)は、支払利息と税金控除前利益で、営業活動から生み出される利益を示します。
EBIT=税引前当期純利益+支払利息
EBITDA
EBITDA(earnings before interest,taxes,depreciation,and amortization:支払利息・税金・減価償却・その他償却控除前の利益)は、支払利息,税金,減価償却費やのれんの償却費などを控除する前の利益を指します。
EBIDTA=営業利益+減価償却費(無形資産の償却費を含む)
NOPAT
NOPAT(net operating profit after tax:税引後営業利益)は以下の式で計算できます。
NOPAT=EBIT×(1-実効税率)
PER
PER(price earnings ratio: 株株価収益倍率)は、株価が利益の何倍になっているかを表します。利益には、EPS(earnings per share:1株当たり純利益)を使います。
$ PER= \dfrac{株価}{EPS(1株当たり当期純利益)}$
第4章 キャッシュフロー計算書
キャッシュフローの分析法
営業CF | 投資CF | 財務CF | 分析 |
+(本業順調) | +(資産売却) | +(資金調達) | 金余り |
+ | + | -(資金返済) | 事業縮小の動き |
+ | -(投資) | +(資金調達) | 資金調達で投資 |
+ | – | -(資金返済) | 安定成熟企業 |
-(本業不調) | +(資産売却) | +(資金調達) | 本業は不振だが資産売却と資金調達で補う |
– | + | -(資金返済) | 本郷は不振だが、資産を売却して負債の返済 |
– | -(投資) | +(資金調達) | 借り入れしながら投資 |
– | – | -(資金返済) | 資金不足 |
第6章 収益性の分析 ROA,ROE
ROA
ROA(rate of return on asset i総資本(事業)利益率)は企業の総合的な収益率を表す指標です。
$ROA= \dfrac{事業利益}{総資本}×100 $
ROAの要因分析
$ ROA=事業利益率(収益性)×総資産回転率(効率性)$
$ \dfrac{事業利益}{総資産}=\dfrac{事業利益}{売上高}×\dfrac{売上高}{総資産} $
ROE
ROE(rate of return on equity:自己資本利益率)は、株主が拠出した資本に対して,どれくらいの利益を生み出したかを示す指標です。
$ROE= \dfrac{親会社株主に帰属する当期純利益}{株主資本} ×100 $
ROEの3分解
$ ROE=当期純利益率(収益性)×総資本回転率(効率性)×財務レバレッジ(安全性) $
$ \dfrac{親会社株主に帰属する当期純利益}{自己資本}=\dfrac{親会社株主に帰属する当期純利益}{売上高}×\dfrac{売上高}{総資本}× \dfrac{総資本}{自己資本}$
第8章 安全性の分析 自己資本比率
自己資本比率
自己資本比率は以下の式で表されます。
$ 自己資本比率=\dfrac{自己資本}{総資本} ×100 $
第11章 マーケットアプローチによる評価
PBRとPERの動きが異なる場合
パターン | PBR | PER×ROE | 解説 |
1 | 高 | 高×高 | 望ましい |
2 | 低 | 低×低 | 低迷 |
3 | 高 | 低×高 | 判断に迷う |
4 | 低 | 高×低 | 判断に迷う |
パターン1は利益が上がっているので望ましく、パターン2は利益が上がってないので、低迷している企業だということがわかります。
問題は、普通は連動するPERとPBRの動きが異なる場合です。まず、パターン3の場合です。ROEが高いので、収益率が高く、基本的に企業活動は順調です。それなのにPERが低いのは、財務指標に表れない他の何らかの理由があることが考えられます・
パターン4の場合は、ROEが低いので低調です。それなのになぜPERが高いのかを調べる必要があります。PERの高さが評価できない例です。
妥当株価の算出
$ 株価=予想EPS×PER $
第12章 インカムアプローチによる評価 DDM
DDM(配当割引きモデル)は、今後手に入る配当を、現在割引価値として表したものです。
$ 株価= \dfrac{D_1}{r-g} $
ただし、$D_1$は1期目の配当、 $r$は期待収益率、 $g$は配当成長率。
「割り引く」とは、将来の値を現在の価値にして計算することです。割り引く利子率は将来期待される収益率(期待収益率)になります。
第13章 割引率の計算
資本コスト=お金を調達するコスト。
- 借り入れの場合は利子
- 株式の場合は配当や値上がり益
$企業からみた資本コスト=債権者の利子+株主の期待収益率$
期待収益率の求め方
株主資本コスト=安全資産の利子率+β ×市場のリスクプレミアム
市場のリスクプレミアムは、株式市場全体の期待収益率ー安全資産の利子率で求められます。$\beta$は個別企業のリスク度合いを表します。$\beta$が高いほど、リスクが大きいことを表します。
$\beta$の求め方
$ \beta=\dfrac{個別企業と市場全体の期待収益率の共分散}{市場全体の期待収益率の分散}$
回帰分析で$\beta$を計算する場合は以下の式を使います。
$ 個別株価の収益率=\alpha + \beta 市場全体の収益率 $
リスクプレミアム
実務的には日本のリスクプレミアムは3-6%を用いることが多いです。
第14章 事業分析・経営戦略分析 PPM分析
PPM分析
プロダクトポートフォリオマネジメント分析。
市場成長率高 | 花形 | 問題児 |
市場成長率低 | 金のなる木 | 負け犬 |
マーケットシェア高 | マーケットシェア低 |
ファイブフォース分析
- 新規参入の脅威
- 産業内の競争
- 供給業者の競争力
- 買い手の交渉力
- 代替品の脅威
第15章 会計戦略分析
注記事項の確認ポイント
- 固定資産の減価償却方法(定額法、定率法)
- 有価証券の評価基準および評価方法(時価法、原価法)
- 引当金の計上基準(貸倒引当金、退職給付引当金など)
- 棚卸資産の評価基準および評価方法(総平均法、移動平均法、先入先出法)
- 収益および費用の計上基準(工事進捗基準、工事完成基準)