速報と精度のトレードオフ
「速報と精度のトレードオフ」は、統計の世界ではよく聞く言葉だ。早めに統計を発表すると、サンプル数が少なくなって精度が落ち、正確を期すと発表が遅くなって政策立案に活用できなくなってしまうということである。
しかし、日本のGDP(国内総生産)の場合、発表が遅いうえに、精度も高くない。精度の測り方はいろいろあるが、速報値発表後に発表されるより精度の高い数値(年次推計値)とのかい離が大きい。
発表の遅さは、4月後半から5月中旬にかけてわかることになる。2022年1-3月の米国の実質GDP成長率は、2022年4月28日に発表された。
中国は4月18日に発表されている。これは例外的に早いとしても、ドイツ、フランス、カナダは4月29日である。イギリスは5月12日と多少遅いが、月次で発表されている。これに対して、日本は、5月18日発表の予定である。
遅い発表で正確な統計ならまだよいが、発表後の改定幅も大きい。トレードオフというのはどちらかをよくするとどちからかが悪くなるということだが、どちらも悪いのは理にかなっていない。
一つの打開策として、速報値をほかの国並みに早くすることが考えられる。
発表が遅い理由はいくつかあるが、一因は、総務省の「家計調査」を使っているためである。家計調査の発表は5月10日で、これを織り込んで発表するために発表が遅くなる。
「家計調査」がGDP推計に必須の統計というならまだわかる。しかし、消費は、基本的には供給側の統計できる。日本独特の推計法のために発表が遅れており、誰にとってもメリットがない。
家計調査は、毎年の餃子支出ランキングの発表で使われているように、家計に関して非常に細かい分類で集計した有用な統計であることは間違いない。しかし、四半期GDPなど速報性が求められる景気統計として使う必要はないのではないか。
(オフィス海水浴CEO)