日本のサラリーマンの賃金は、春闘で決まります。春闘は、賃上げの方針を労働組合の全国的な組織で調整した後、各企業に提出して団体交渉を行うものです。
要求は、賃上げ率ですが、その中身はベースアップ(ベア)部分と定期昇給部分に分かれています。定期昇給部分は、賃金カーブに従って増える部分で、自動的に増える部分です。雇用者にとっては、ベースアップ部分をどれだけ勝ち取れるかが重要です。
経済統計としては、厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ集計」と厚生労働省の「賃金事情等総合調査の概要」があります。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
春闘賃上げ率の推移
春闘賃上げ率の推移は、労働政策研究・研修機構の「早わかりグラフで見る長期労働統計」にあります。
賃上げ率の分解
賃上げ率には、ベースアップ部分と定期昇給部分があります。労働省側からみると、年功序列賃金を前提にすると、1年間勤続年数が増えると給料が上がります。これが定期昇給部分(定昇)です。一方で、労働者全員の賃金を上げる部分があり、これをベースアップ(ベア)と呼びます。
マクロ経済の賃金統計との関係からすると、定昇部分は個人からみた昇給で、年齢構成が変わらないとすると、統計上の賃金の上昇率はゼロとなります。
一方で、ベースアップ部分はマクロ経済の賃金の上昇率に反映されます。
国の機関である中央労働委員会の「賃金事情等総合調査」では、賃上げ率のほか、ベースアップ部分も公表されています。賃上げ率からベースアップ部分を差し引いた定昇部分は、1.8%程度です。
毎月勤労統計の現金給与総額と賃金事情等総合調査の賃上げ率、ベースアップを比べると以下のグラフになります。現金給与総額の伸び率は、ベースアップに近い水準です。しかし、現金給与総額は、所定外給与(残業代)やボーナスにも影響されます。
民間主要企業春季賃上げ集計
2022年の集計対象は、以下の企業です。
妥結額(定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業358社。
賃金事情等総合調査
2021年の集計対象は、以下の企業です。こちらの方が範囲が広く、詳しいデータが載っていますが、集計企業数は100社程度です。
原則として次に該当する企業の中から中央労働委員会が独自に選定している。
- 資本金 5億円以上
- 労働者 1,000人以上
この統計は、賃金に関する総合的な統計なので、手当や要求額などのデータもあり、春闘に関するデータは、表8-2産業別労働者一人平均の賃金改定額(率)にあります。