日本全体の雇用情勢を知るために必要な統計について解説します。雇用者数と賃金の両方が重要になります。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。

1位 失業率
経済政策の目標として重要なものが失業率です。職を得てお金を稼げることは、人生の重要事項ですので、失業率は国民生活にとって最も重要な指標の一つといえるでしょう。
失業率は、労働力人口に対する失業者の割合です。労働力人口は、人口のうち、働く意志のある人です。主婦や学生は除かれます。
失業率=失業者数/労働力人口
このため、失業者の増減とともに、労働力人口の増減にも影響を受けることが重要です。景気との関連で、生産活動への影響を見るという意味では就業者数を参照することも重要です。
総務省の「労働力調査の解説(令和元年6月版)」によれば、完全失業率と失業率の違いは、以下の通りです。
- 「完全失業者」は対象月の1ヵ月間求職活動をしているもの
- 「失業者」は対象月の月末1週間に求職活動をしているもの
「完全」という言葉とは関係ないので、注意が必要です。


2位 有効求人倍率
有効求人倍率は多少わかりにく指標です。有効求職者に対する、有効求人数の割合です。企業の求人意欲がどのくらい強いのかがわかります。1を超えていれば、職を探しているひとよりも雇いたい人の数が多いので、雇用環境が良いということになります。式で書けば、以下のようになります。
有効求人倍率=有効求人数/有効求職者数
この統計は、調査統計ではなく、業務統計です。ハローワークでは、求人、求職を募っていますが、業務に必要な求人数と求職者数を統計にしたものです。
求人票は、3ヵ月有効です。現在有効な求人数と、求職者を使ったものが有効求人倍率で、その月だけのデータを使ったものが新規求人倍率です。
3位 現金給与総額
職を得ることができたら、次の興味は、賃金です。賃金動向を示したのが、厚生労働省の毎月勤労統計にある現金給与総額です。
現金給与総額には、所定内給与、残業手当のほか、ボーナスなどすべてが含まれています。サンプルの入れ替え時に断層が生じるため、継続サンプルだけで伸び率を出しだものも、共通事業所系列として発表されています。以前は大きな差がありましたが、最近はそれほど差はありません。
現金給与総額は、すべての雇用者の賃金を平均したものなので、その構成比が変わると影響を受けます。アベノミクス以降、賃金上昇の伸びが高くなかったのは、相対的に賃金の低い女性や高齢者の比率が高まったことが一因です。

「月例経済報告」主要経済指標より
失業率のグラフの描き方
失業率の時系列のグラフを描いてみましょう。労働力調査のページから入手する方法とe-Statから入手する方法がありますが、e-Statから入手する方法を中心に説明します。
総務省の労働力調査のページのから入手する方法
労働力調査→調査の結果→結果の概要→月次 長期時系列→a-1 主要項目
e-Statから入手する方法
e-Statのキーワード検索で、「労働力調査」を探します。
データベースかファイルかを選びます。
今回はファイルの中から探します。
長期時系列データの月次を選びます。

調査年月を選択する画面になるので、最新月を選びます。
表の下の方にある長期時系列表を選び、エクセルファイルをダウンロードします。

グラフの作成
- 期間を2000年1月以降
- 列は、完全失業率の男女計
にします。
セルの結合をはずす
セルが結合しているところがあるので、表の左上をクリックして表全体を選び、右クリック→セルの書式設定→配置 で、「セルを結合する」のチェックを外します。

日付は新たに作る
日付は、新たに書き直します。数値の左に空白の列を作り、列を選んだ後、右クリック→セルの書式設定→表示形式でユーザー定義を選び、種類をyy/mmにします。

系列名を付ける
データの上に系列名「完全失業率」を入力します
グラフを描く
折れ線グラフを描くと以下のようになります。
