住民基本台帳移動報告は、人々が都道府県間、市町村間をどのように移動したかを捉えることができる統計です。月次で発表されています。住民票の情報を基にに統計を作ったもので、業務統計といわれます。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
学生の移動は把握できないケースが多い
住民基本台帳人口移動報告は,市町村長(東京都特別区の区長を含む。)が作成する住民基本台帳により,人口の移動状況を明らかにすることを目的とする統計です。総務省から毎月発表されます。
人口移動を捉える統計ですが、注意点があります。実際に人々が移動しても、住民票を移動しなければ移動として捉えられないということです。東京に住んでいる地方出身の大学生は、住民票を移していない人が多いのではないでしょうか。このケースでの移動は捉えられません。
また、国内移動を捉えているもので、海外から転入した場合や海外へ転出した場合は捉えられません。このため、外国人が海外から初めて住んだ場所から日本国内のほかの地方へ移動した場合、転出だけが捉えらえることになります。
新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークをする人が増えました。地方へ移住して住民票を移した場合はこの統計でと捉えられますが、2拠点生活する場合、住民票を移動しなければその動きは捉えられません。
都区部から茅ヶ崎への転出が急増
住民基本台帳移動報告は、毎月発表されていますが、特にプレスリリースはありません。時々、統計Today、明日への統計などの総務省の紹介記事に統計の分析例が載っています。
このうち、統計 Today No.181「東京都特別区部の転出超過の状況〜住⺠基本台帳人口移動報告 2021 年の結果から〜」を紹介します。この記事は、新型コロナウイルス感染拡大後、東京都や東京都区部から転出する先が、近隣よりも遠方になったことをまとめています。東京都区部からの転出先は以下の表でまとめられています。
2019年の転出先の前年比増加率上位は埼玉県富士見市、千葉県柏市でしたが、2021年では神奈川県茅ヶ崎市、同藤沢市となっています。
地図でみると、2021年のみ前年増加率上位10位に入った市町村は、オレンジ色で、都区部からより離れていることがわかります。
東京圏から沖縄県へ移動はそれほどでもない?
次に、e-Statからデータを実際にとってみましょう。テレワークが可能になったことで、東京都から田舎に引っ越す増えているというニュースを聞きます。沖縄についてはどのような状況でしょうか。
統計では、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにして、増えているようには見えませんでした。2021年に東京圏から沖縄県に移動した人(日本人のみ)は9983人でした。この統計だけみると、トレンドとして増えてはいますが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、それほど移住が加速したようには見えません。
e-Statによるデータ取得法
e-Statで、住民基本台帳移動報告を選びます。分野では人口になります。年次で調べる場合は、2019年以前と2020年以降ではデータベースが分かれています。長期的な傾向を見るためには2つの表を接続する必要があります。
- 2019年まで ■年報(基本集計)
- 2020年以降 ■年報(実数)2020年~
まず、■年報(基本集計)を使います。表番号2の「男女、移動前の住所別都道府県間移動社数数(2014年~)を選びます。
項目を選びます。
- 性別 総数
- 移動前の住所地 東京圏
- 国籍 日本人移動者
- 全国・都道府県・大都市 沖縄県
- 時間軸(年次) すべて
次は、■年報(実数)2020年~の表を使って、2020年と2021年のデータを入手します。
表番号2の男女、移動前の住所地別都道府県間移動者数を選びます。
項目を選びます。
性別 総数
移動前の住所地 東京圏
国籍 日本人移動者 日本人移動者
全国・都道府県・大都市 沖縄県
時間軸(年次) すべて