内閣府の「国民生活に関する世論調査」では、国民の意識についてさまざまな観点から質問をしていて、意識の変化をみることができます。
2022年調査は2022年10月〜11月、18歳以上の男女3000人を対象に郵送で実施sされました。回答率は62.9%で、2023年1月24日に発表されました。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
ディズニー開園時の生活意識
粟田房穂・高成田亨「ディズニーランドの経済学」では、ディズニーランドが成功した背景に、生活意識の変化を挙げています。
ディズニーランドに、これだけの人間が集まるという背景には、人びとの生活意識が変わってきたことがある。
「ディズニーランドの経済学」
「今後の生活の力点をどこにおくか?」という問いに、レジャー・余暇生活をあげる人は徐々にふえている。総理府広報室の「国民生活に関する世論調査」では、八三年に、第一位になってしまった。高校生に大学入学後の生活目標を聞けば、レジャー志向と社交志向の遊学派が六割を占め、教養を高めたいという古典派は三割しかいない(日本リクルートセンターの八二年調査)。
これを読んで以来、この統計を追っています。今後の生活で力を入れたいことについて、ディズニーランドが開園した1983年に「レジャー・余暇生活」が第1位になったのは、引用の通りです。
「レジャー・余暇生活」はその後も高い比率を保っています。その後の変化として最も大きいのは「食生活」に重点を置くと回答した人が増えていることでしょう。ただ、2021年と2022年調査は新型コロナウイルス感染拡大下なので、巣籠もり需要の一環として増えた面もあるかもしれません。
また、「これから先、あなたの家の生活はどうなっていくと思いますか」という質問に関しては、1990年時点では、「良くなっていく」が「悪くなっていく」よりも多かったですが、1994年調査で「悪くなっていく」が「良くなっていく」を超え、その後も「悪くなっていく」が多い状況が続いています。あまり良い状況とは言えません。
今年の注目は物価
2022年調査で注目されたのは物価の動向です。政府への要望することで「物価対策」が64.4%と前年の32.9%から大きく増えました。1970年代のオイルショック時並みに上がっています。
一方、デフレ下の2000年前後でも物価対策への要望が3割あるというのは、インフレを嫌う人が多いという証なのか、不思議な気がします。
不安も増える
悩みや不安を感じている人も増えました。日常生活で「悩みや不安を感じている」と答えた人が2021年9月調査で77.6%に跳ね上がっています。この時点ではロシアのウクライナ侵攻は起こっていないので、新型コロナウイルスによる影響が大きいと考えられます。また、以下で述べる調査法の影響があるのかもしれません。
2022年調査は前年調査よりも高くなり78.0%と過去最高になりました。リーマンショック後の2009年調査以降徐々に低下していた流れを完全に打ち消しました。
調査法の変化に注意
2021年と2022年のデータがそれまでのデータに比べて、大きく変化しているものが多いです。これは新型コロナウイルスの感染拡大による意識の変化を反映している面もありますが、調査法の変化による可能性もあります。
2019年調査までは、調査員による調査でしたが、新型コロナ感染拡大以降は郵送による調査になっています。統計には以下の但し書きがついています。
注)令和元年6月調査までは、調査員による個別面接聴取法で実施しているため、令和3年9月調査との単純比較は行わない。
2023年1月発表「国民生活に関する世論調査」
まとめ
- 内閣府の「国民生活に関する世論調査」を紹介しました
- 今後力を入れたいことでは「食生活」が増えています
- 政府への要望では「物価対策」が増えました。
- 「悩みや不安を感じている」人も過去最高です。