経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
経済分析

【経済分析】論文の書き方|レポートとの違いを徹底解説

チェックリスト

  • 段落の最初は一字下げてあるか?
  • 文章中に根拠となる参考文献をいれてあるか?
  • 図や表にそれぞれ出典を入れてあるか?
  • 参考文献の書き方 図書は、 著者名(出版年)「タイトル」出版社
  • Webの書き方は特に注意する。著者名が判明しないものは参照できない。参照月日が必要。 
  • 著者名(更新年)「タイトル」サイト名、URL、参照(2022-12-12)
  • 本文で引用していない参考文献を入れない。
  • 体言止めは使わない。
  • 過去形にする。

論文はレポートではない

論文とは、何かを調べてまとめたものではなく、新たな発見や考え方を述べたものです。これまでの本や論文に載っていなかった事実がないと論文とは言えません。それはそれほど難しいことではなく、新たな調査や考え方を自分で考えればよいだけです。難しいように感じるかもしれませんが、興味のある事柄について突き詰めていれば自ずと道が開けてくるものです。

  • 問題 何をテーマにしたか
  • 目的 研究で、なにを解明するのか?
  • 方法 どのような方法で解明するか?
  • 結果 結果はどうなったか?
  • 考察 その結果について、どのように考えるか。
  • 引用文献 先行研究など

参考文献は重要

きちんとした論文かどうかは、参考文献を見ればわかります。論文では、とにかく出典を明らかにすることが重要です。どこに書いてあったかわからないようなものを根拠に論文は書けません。噂や誰かのおしゃべりのなかで言ったようなことが根拠として使えないのと同じです。そのためには、参考文献が必須となります。

学術論文ではないですが、様々なタイプの文献が参照されているので、内閣府「経済財政白書」をお手本とするとよいと思います。文章の体裁、論文の引用の仕方、グラフの描き方などを参考にしてください。

経済財政白書」で検索すると出てきます。

参考文献と引用の対応

引用と参考文献は以下のように対応しています。参考文献に載せてある書籍などは、すべて本文中で引用している必要があります。

<本文>

賃上げ水準は若年労働者を中心に大きく上昇

これまでの分析では、各労働者の賃金を平均した指標の動向を対象としてきたが、平均賃金の上昇は労働者の参入・退出の影響や構成比の影響も受けるため、必ずしも同一労働者の賃金上昇率を表しているわけではない。そこで、同一の労働者の賃金水準がどのように変化しているかを確認するため、上野・神林(2017)の手法を参考に、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を用いて疑似パネルデータを作成し、所定内給与の動向の分析を行う。疑似パネルデータとは、性別、年齢、勤続年数、最終学歴の4要素を使い同一事業所で同一人物だと推測される労働者のみを抽出して分析するものであり、こうした手法を用いることにより、同一人物の賃金上昇率を近似的に推計することが可能となる39。

<参考文献>

上野有子、神林龍(2017)「賃金は本当に上がっていないのか─疑似パネルによる検証」、玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』慶應義塾大学出版会

(2018年経済財政白書より)

ポイント

  • 本文中には、「参考文献の著者の苗字(出版年)」という形で、参考文献を表記する。
  • 参考文献リストには、「参考文献の著者の氏名(出版年)書誌情報」という形で表記する。

参考文献の書き方

書籍

岡谷貴之(2015)『深層学習』講談社

原ひろみ(2014)『職業能力開発の経済分析』勁草書房

論文集を集めた書籍

上野有子、神林龍(2017)「賃金は本当に上がっていないのか─疑似パネルによる検証」、玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』慶應義塾大学出版会

大湾秀雄・佐藤香織(2017)「日本的人事の変容と内部労働市場」川口大司編『日本の労働市場』有斐閣

学術雑誌

神林龍(2011)「日本における名目賃金の硬直性(1993-2006)─擬似パネルデータを用いた接近─」『経済研究』第62巻4号

山本勲(2007)「デフレ脱却期における賃金の伸縮性」『三田商学研究』第50巻5号

白書など

内閣府(2015)『平成27年度 年次経済財政報告』

情報処理推進機構(2017)『IT人材白書2017』     

ディスカッションペーパーなど

吉田充(2017)「GDPギャップ/潜在GDPの改訂について」経済財政分析ディスカッション・ペーパー・シリーズ DP/17-3

桜健一(2006)「フローデータによるわが国労働市場の分析」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ No.06-J-20 日本銀行

調査資料

一般財団法人家電製品協会指定法人業務センター(2016)「平成27年度使用済家電4品目の経過年数等調査」

経済産業省(2018)「キャッシュレス・ビジョン」(平成30年4月)

インターネットの資料

指宿信(2000)「ネット文献の引用方法について—学術資源としてのネットの可能性—」, <http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/compass-028.html> 2004年5月7日アクセス.

Webサイトの引用に注意

Webサイトからの引用は、原則著者が書いてあるか、編集元が明らかな(〇〇編集部など)場合に限ります。著者名が不明なものや怪しげなサイトは引用できません

著者名(更新年)「    」URL(参照2022-12-12)

〇〇編集部(更新年)「    」URL(参照 2022-12-12)

調査法(定量分析)

調査法

  1. 自分でデータを作る
  2. 統計分析をする
  3. アンケート調査をする

自分でデータを作る

自分で作ったデータを中心に分析します。以下に例を示します。

  • 1952年10月から発行している『明星』を調査対象とし、あらかじめ調査用紙を作成していき、雑誌に掲載されていた質問内容を仕事、恋愛、その他に分類する。
  • 観察対象は散歩犬とし、しつけの有無と装飾の有無について記録する。一日のデータ数を100とし、100匹に到達したらデータ収集を修了。しつけの有無は、①リードを引っ張る②吠える・唸る③飛びつき――で判断する。装飾については、①衣服の有無②リードが華美かどうか③アクセサリーの有無――で判断する。
  • ディズニー映画を視聴して、悪役の登場する時間を調べて比較する
  • マクドナルド、駅のホーム、メガネ店など調査場所はいくらでもある。広告の折り込みや、政府の統計なども資料となる。

統計的な分析をする

  • 記述統計量を調べる。相関係数回帰分析などが重要です。
  • 関ジャニ∞のCD発売枚数と実質GDP成長率との間の相関係数を調べる。
  • 全日空の株価と実質GDP成長率の相関係数を調べる。

グラフは自分で書く

  • ほかの資料のグラフをそのまま使ってはいけません。自分の言いたいことに沿ったグラフにする必要があります。(いらない情報は表示しない)
  • 表やグラフを作っただけで、説明したつもりにならないことも大事です。表やグラフで何が言いたいかを文章で書かないと、意味がありません。表やグラフは便利ですが、その読み方を文章にしないと読者に伝わりません。

(参考)政策評価

分析方法の参考として、政策評価のエビデンスとしては以下のものがあります。レベル5が最も高いです。

エビデンスのレベル

レベル内容
レベル5ランダム化比較実験
レベル4差の差分析、傾向スコアマッチング、操作変数法
レベル3相関分析、回帰分析、コーホート分析
レベル2比較検証、記述統計
レベル1専門家の意見の参照

調査法(定性分析)

事例研究(ケーススタディ)

事例研究(case study)は、研究テーマの論点に対応した実例を取り上げて、実態面での特徴などを把握する方法です。ケーススタディにおいても、単なる事例を紹介するだけでは論文にはなりません。主張したい仮説があり、それを裏付けるために、事例を研究するという手順が必要です。

会社の業績を調べただけとか、人気に秘密を紹介しただけでは論文とは言えないので注意が必要です。

現地訪問調査

論文やマスコミからの情報が本当かどうか、実際に行って検証します。

訪問日時などは詳細に記述する必要があります。

面談・ヒアリング調査

(例)「おたくは社会的常識がないわけではない」という仮説に対して、有識者にその可否を回答してもらいます。

フレームワーク

SWOT分析 Strength:強み、Weakness:弱み、Opportunity:機会、Threat:脅威に分類して考えます。

アンケートについて

アンケートは優良な調査手段。

サンプル数は100以上。少ないと標本誤差が大きくなります。

無作為抽出は難しいです。心理学では女子大生に限るなど、有意抽出が一般的です。

アンケートの調査票作成上の注意

属性をはっきりさせることが重要です。女子大生100人なのか、大学生100人なのか、など。アンケートとしては、属性が小さい方が精度が上がります。

属性をはっきりさせるための質問は必須です。性別、年齢などは必ず聞く必要があります。性別や年齢が違うと判断が違う場合があるためです。

倫理的配慮の必要性

アンケート回答者を①単なる研究の手段として用いない②研究参加による不利益から守る③尊厳が保障された環境で協力できるようにするため、倫理的配慮が必要です。

アンケートで必要な配慮

  • 説明文(挨拶文)は必ず書く必要があります。何を明らかにするための調査か、回答時間の目安、締め切り日時、データは研究のためにのみに使用することを明記する必要があります。
  • 回答者が協力しない自由を保障する→協力してもらって当然ではない
  • 回答者に大きな負担を与えないように計画する→最高でも15問
  • 取得した情報の保護に努める→情報が流出しないように管理する

アンケートで使う尺度

尺度の種類

種類尺度性質
質的データ名義尺度カテゴリーの違い性別、職業、血液型
順序尺度優劣があるもの。成績の順位、階級
量的データ感覚尺度等間隔の相対的な程度西暦、態度、温度
比例尺度ゼロに対して、どのくらいの量か。身長、体重

尺度の種類

リッカード尺度 5段階、7段階など。

・全くない、あまりしない、時々する、よくする、非常によくする

SD(セマンティックディファレンシャル)尺度

・2つの語句の間での位置を問う。

・(嫌い)非常に、かなり、やや、どちらともいえない、やや、かなり、非常に(好き)

評定尺度の種類

種類内容
カテゴリー尺度非常に満足、まあ満足、どちらともいえない、あまり満足でない、満足でない
バランス尺度非常に満足、満足、どちらともいえない、不満、非常に不満
単純尺度必要、やや必要、どちらともいえない、あまり必要でない、必要でない
強制選択尺度満足、やや満足、やや不満、不満
相対比較尺度Aの方が非常に好き、好き、同じく位、好き、Bの方が非常に好き

テーマをどうやって決めるか

ブレーンストーミング

KJ法

  • アイディアを付箋に書く。一枚には一つのトピック
  • ブレストの実施とカードの記入(単位化)
  • グルーピング(統合化)
  • 並び替え(図解化)
  • 言葉にする(文章化)

マインドマップ

いろいろな文献に当たる。ジュンク堂など大きな本屋に行く。

基本は先行研究を探してそれを発展させる。まずは、論文を探す。

スケジュール

3年生

1月末まで:テーマを決め、資料を集める。先行研究を探す。

就活の面接などで、ゼミの内容、卒論の内容を聞かれる場合があるので、テーマは決めておく。

自分のやろうとする研究の土台になる論文を探しておくと楽。

春休み終了まで:論文を書いて提出する。卒論のテーマが望ましいが違っていても可。

長さは問わないが、参考文献リストとそれを本文中に引用していることが条件。

チェックリスト

  • 段落の最初は一字下げてあるか?
  • 文章中に根拠となる参考文献をいれてあるか?
  • 図や表にそれぞれ出典を入れてあるか?
  • 参考文献の書き方 図書は、 著者名(出版年)「タイトル」出版社
  • 参考文献の書き方 Webからは 
  • 本文で引用していない参考文献を入れてないか?

4年生

著者名(更新年)「タイトル」サイト名、URL、参照(2022-12-12)

4月-6月:資料集め。(この期間は就職活動もあり、あまり進まない)

7月:第1回提出(3ページ以上)論文を書き始める。テーマ、進捗状況などを発表。

夏休み: 学生生活最後の夏休み.できれば海外に行き見聞を広めよう。

9月: 論文を書き進める。必要に応じてテーマの修正。

9月末:第2回提出(5ページ以上)

10月末:第3回提出(7ページ以上)

11月末:第4回提出(10ページ以上)

12月:論文の提出(期限厳守)

1月:卒論の発表会。論文の推敲、修正など。ポスターの準備。

2月下旬:卒論ポスター発表会

卒論のための参考文献

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