GDPは四半期ごとに発表されています。消費や投資など支出項目を統合することで計算されていますが、消費と投資は日本独特の方法で推計しています。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
GDPの四半期速報(QE)にはさまざまな課題があります。その一つが、民間最終消費や民間企業設備投資が需要面と供給面の両方から推計されていて、統合されていることです。
両者の良いところをとって推計しようという試みですが、消費については、家計調査を使う需要側統計のウエートがかなり低下しています。現在約4分の1ですが、そろそろ供給面だけの推計でよいのではないかと思っています。
最小二乗法を用いて推計
統合比率は、最小二乗法を用いて計算されています。年次推計値の伸び率を$y_t$ 需要側推計値の伸び率を$d_t$ 供給側推計値の伸びを$s_t$とすると、以下の式を推計して、係数$α$と$β$を求めています。年次推計の値に近い変数の係数が高くなるようにできています。$α+β=1$という制約を課して推計しています。
$ y_t=αd_t+βs_t+e_t $
国内家計最終消費支出の場合
2022年10月19日
第32回国民経済計算体系的整備部会で、国内家計最終消費支出の推計法の変更について発表がありました(資料2 QEにおける供給側推計品目の細分化等について)。供給側からのみ推計する「共通推計項目」が140品目から170品目に約2割増えました。これに伴い、統合比率が変わりました。前回よりt値は上がっており、95%信頼区間はかろうじて正になっています(0.0037<α<0.5078)。
係数 | t値 | |
α | 0.2557 | 2.0989 |
β | 0.7443 | 6.1086 |
2020年11月19日
2020年11月19日に開催された第24回国民経済計算体系的整備部会の資料「2015年(平成27年)基準改定における統合比率の再推計結果:国内家計最終消費支出、民間企業設備」にあります。
国内家計最終消費支出の場合、消費の場合、需要側の統計は家計調査、供給側の統計は生産動態統計などです。需要側の係数は0.2622でt値は1.828です。t値は、「αがゼロである」という帰無仮説を棄却できないくらい低いです。このため、需要側の推計値は使わずに、供給側の推計値だけでよいのではないか、という意見がでています。
係数 | t値 | |
α | 0.2622 | 1.8288 |
β | 0.7378 | 5.1455 |
民間企業設備投資の場合
2020年11月19日に開催された第24回国民経済計算体系的整備部会の資料「2015年(平成27年)基準改定における統合比率の再推計結果:国内家計最終消費支出、民間企業設備」にあります。
民間企業設備投資の場合、需要側統計は、法人企業統計、供給側統計は鉱工業指数などです。需要側統計の係数は、消費に比べて高いですが、供給側の係数よりは小さくなっています。こちらも、供給側のみの推計でよいかもしれません。
係数 | t値 | |
α | 0.4522 | 3.7149 |
β | 0.5478 | 4.5009 |