経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
GDP

【GDP】GDPの考え方|基本はこれで完璧

GDPとは、Goss Domestic Productの略で、国内総生産のことです。国内の生産活動の大きさを表します。GDPは、景気を測るのにふさわしい指標ですが、実感とずれる場合もあるので注意が必要です。

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

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付加価値ベースの指標

GDPは日本国内の経済活動の大きさを表したものなので、その伸び率が高ければ景気が良い状態、低ければ悪い状態と考えられます。GDPの生産とは、「一定期間中に国民が作り出した付加価値の合計」のことです。自動車やパソコン、米など生産活動の合計と考えられます。

しかし、生産額を単に合計するだけだと二重計算になってしまいます。たとえば、車の生産にはタイヤが使われますが、車の生産額とタイヤの生産額を単純に加えると、タイヤの生産額が二重に計算されてしまいます。そこで自動車の生産額からタイヤなど自動車を作るのに使われた部品の金額(中間投入といいます)を差し引いて自動車の付加価値額とします。自動車産業で新たに加わった価値という意味なので付加価値と呼び、各産業の付加価値を足し合わせてGDPを計算します。

三面等価

GDPでは三面等価が成り立つことも重要です。国内で生産されたものは企業の所得か雇用者の報酬になるので、これらを足し合わせてもGDP(分配面のGDP)となります。また、生産物を受け取る側からみると、消費か投資、輸出などいずれかの項目になるので、これらを足し合わせてもGDP(支出面のGDP)になります。次の式が成り立ち、どの統計から計算しても等しくなります。

生産面のGDP=分配面のGDP=支出面のGDP

生産の代表的指標は国内総所得(GNI)、分配の代表的指標は国内所得(DI)、支出の代表的指標は国内総支出(GDE)ですが、三面等価の原則が成り立つので、すべてGDPと呼んでも構いません。国内所得とGDPでは概念が多少違いますが、実際の数値上の違いは図よりも小さく、特にマクロ経済学の理論的な説明をする場合は同じものとして扱う場合が多いです。

総と純

GDPに海外からの純要素所得の受け取りを加えたものをGNIと呼びます。

「総」生産と「純」生産の違いは、固定資本減耗を含んでいるかどうかの違いで、純生産の場合は、固定資本減耗が除いてあります。国内総生産(GDP)から固定資本減耗を引くと国内純生産(NDP)になります。

固定資本減耗とは、設備投資などの古くなって磨り減った部分という意味です。消耗した部分を含んでないという意味では、こちらの方が厳密な生産額を表します。

国内所得

国民所得(DI)は、消費税などの間接税を引いて補助金を足し、政府活動による価格の変化を取り除いています。市場価格表示は政府活動によって変えられているので、それを補正したもので、要素価格表示と呼びます。

100円のチョコレートを買うと、消費税の5円分余計に払うことになります。実際に消費したものは100円分の価値なので、消費税など間接税の部分を除いて所得の大きさを測ろうとしたのが国内所得です。純生産や国内所得などを使うほうが分析目的によっては望ましい場合があります。

GDPとGNIの違い

国内総生産(GDP)や国民総所得(GNI)は経済を分析する際には非常に重要です。この違いを正確に把握しておきましょう。GDPは国内での生産活動を集計したもので、GNIは日本人の生産活動を集計したものです。景気動向をみるにはGDP、日本人の経済活動の成果をみるならGNIがふさわしいと言えます。

GDPは地理的な概念で日本の生産を考えるものです。日本人でも外国人でも日本国内で生産したものがGDPとなります。GDPはGross Domestic Productの略で、GNIはGross National Incomeの略です。

GNIは人的な概念で日本の生産を表します。国内でも海外でも、日本人が生産したものを日本の生産と考えます。海外のミュージシャンが日本で講演をして稼いだお金は、日本国内での活動なのでGDPには含まれますが、日本人が活動して得られたものではないのでGNIには含まれません。

日本ではGDPとGNIの差はそれほど大きくありませんが、ヨーロッパなど人の移動が大きいとGDPとGNPでは大きく違ってきます。景気を見る場合は、国内の経済動向を知ることが重要ですから、GDPを使う場合が多いです。一方、GNIを重視するべきだという見方もあります。海外への証券投資が増えているうえ、日本企業の過去の直接投資からの収益が上がっており、海外からの投資収益が増加しています。こうした収益も経済活動から得られた成果と考えるなら、経済活動を見るにはGNIを重視するべきだという意見です。

GDPをGNPにするには

国際収支統計では、所得収支という項目があります(解説はこちら)。これは、要素所得の受け取りから支払いをひいたものです。要素所得とは「労働や資本を使って得られた所得」のことです。つまり、日本人が海外で投資した株や債券の収益、直接投資での収益、日本人が海外で働いた報酬を日本に持ってきたもの(要素所得の受け取り)から、外国人が日本に株や債券を投資した収益、外国人が日本への直接投資で上げた収益、日本で外国人が働いた報酬のうち海外へ持って出たもの(要素所得の支払い)を差し引いたものです。のこれを使って、GDPからGNIへの変換ができます。GDPをGNIにするには、要素所得の受け取りを足して、要素所得の支払いを引けばよいことがわかります。要素所得の受け取りから要素所得の支払いを引いたものを要素所得の純受け取りといいますが、GDPに要素所得の純受け取りを加えるということでもあります。

<GDPとGNIの違い>

国民総生産=国内総生産+海外からの要素所得受取-海外への要素所得の支払

               =国内総生産+海外からの純要素所得

  • GDPは、外国人でも日本人でも日本国内にいる人が生産した量 (地理的)
  • GNIは、外国にいても、国内でも、日本人が生産した量 (人的)

GDPの内訳

GDPは重要な統計なので、その内訳についても議論することが多いです。中でも重要なのが、支出面からみたGDPです。支出面の統計は他に比べて捉えやすく、四半期ごとに発表されます。新聞記事などでも細かい内訳について議論する場合が多いので、まずGDPの項目の説明をしましょう。

消費と投資

支出を大きく分けると、消費と投資に分けられます。この二つに分けるのは、支出の性格が両者で異なるためです。消費は、お金を使うこと自体に満足感を感じるものです。食事をしたり、服を買ったりするのは消費になります。一方、投資とは、それを買うこと自体に満足感はないが、将来役に立つだろうと思って買うものです。企業の設備投資が代表的なもので、工場を建てたり店舗を作ったりすること自体で企業は満足感を感じているわけではありません。工場を使って製品を作り、利益を上げることが目的でお金を使っています。投資はさらに固定資本形成と在庫投資に分けられます。

消費と投資の意味について

 一般的な定義GDP統計での定義
消費買うことによって満足度が高まるもの。 レストランの食事、服の購入家計(個人)が行うものはほとんど消費。 投資は、住宅投資だけ。
投資買うことによって、将来儲かることが期待できるもの。 教育への投資、企業の工場建設、株を買うこと。個人で英会話学校へ通うのも投資。企業が行う投資。工場や店舗など(設備投資)。政府が行う投資。道路や橋の建設など(公共投資)。ものを売るのに備えて、手元に商品を持っておくこと(在庫投資)。

経済主体別に分ける

消費と投資はさらに経済主体別に分けることができます。消費は家計が消費する民間最終消費と政府が消費する政府消費に分けられます。

消費の中には教育への支出など投資的な意味合いのあるものもありますが、分類が難しいため統計上、消費者の支出は住宅投資以外は消費として扱います。

投資のうち公的固定資本形成は、民間企業と政府に分かれ、家計の投資である民間住宅投資、企業の投資である民間設備投資、政府の投資である公的固定資本形成に分けられます。

在庫投資は民間企業在庫投資と公的在庫投資に分けられます。

 基本的な分類細かい分類簡単に言うと…説明
消費最終消費支出民間最終消費支出民間消費普通の消費
  政府最終消費支出政府消費政府の消費
投資総固定資本形成民間住宅投資住宅投資家を建てる
  民間企業設備投資設備投資工場やビルを建てる
  公的固定資本形成公共投資政府が道路や橋を作る
 在庫品増加在庫投資在庫投資店や工場に在庫を持っておく
輸出財貨・サービスの輸出財の輸出輸出海外へ売る
  サービスの輸出  
輸入財貨・サービスの輸入財の輸入輸入海外から買う
  サービスの輸入  

内需、外需

そのほかにも民間需要と公的需要、海外需要に分けるわけ方もあります。民間需要は家計と企業の需要の合計を表したもので、公的需要は政府の需要を表したものです。それに海外需要(=外需=財・サービスの輸出-財・サービスの輸入)を足すとGDPになります。

民間需要と公的需要をあわせたものを国内需要(内需)と呼びます。 

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