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統計学・計量経済学

【計量経済学】BLUEとは|最良線形不偏推定量について徹底解説

BLUEとは、最良線形不偏推定量(best linear unbiased estimator; BLUE)のことを表します。とても良い推定量ということで、最小二乗法はさまざまな仮定を満たせばBLUEになります。

ここでは以下の式の係数𝛽の推定量に関して、最小二乗法がBLUEになることを説明します。

𝑌𝑖 =𝛼 +𝛽𝑋𝑖

結論は以下の通りです。

線形推定量

最小二乗法の推定値ˆ𝛽𝑌𝑖の線形関数(加重和)になっているので、線形推定量です。

ˆ𝛽 =𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)𝑌𝑖𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

線形不偏線形推定量

最小二乗法の推定量ˆ𝛽の期待値はβなので、βは線形不偏推定量です。不偏性の条件を満たしています。

最良線形不偏推定量

一般的な線形不偏推定量の式から、分散を計算し、「一般的な線形不偏推定量の分散は、最小二乗法の分散にマイナスではない分散を加えたもの」という形なることを導きだし、最小二乗法の推定量の分散が最小であることを証明します。

線形推定量

線形推定量とは、推定量ˆ𝛽が、𝑌𝑖の線形関数として表されるものです。最小二乗法は、以下のように表され、線形推定量です。

ˆ𝛽 =𝑛𝑖1(𝑋𝑖¯𝑋)𝑌𝑖𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

ˆ𝛽 =1𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2𝑛𝑖1(𝑋𝑖 ¯𝑋)𝑌𝑖

ˆ𝛽 =1𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2((𝑋1 ¯𝑋)𝑌1 +(𝑋2 ¯𝑋)𝑌2(𝑋𝑛 ¯𝑋)𝑌𝑛)

これは以下のように書くことができます。

ˆ𝛽 =𝑛𝑛=1𝑤𝑖𝑌𝑖

𝑤𝑖は以下の式です。

𝑤𝑖 =(𝑋𝑖ˆ𝑋)𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

推定量ˆ𝛽が、𝑌𝑖の線形関数として表されることがわかります。

線形不偏推定量

まず不偏性があるために係数にどのような条件が必要かを考えて、最小二乗法がその条件を満たしていることを説明していきます。

線形推定量は一般に以下で表されます。

𝐶 =𝑐0 +𝑛𝑛=1𝑐𝑖𝑌𝑖

不偏性があるということはCの期待値𝐸(𝐶)𝛽になるということです。𝛽を使った式にするため、𝑌𝑖𝛼 +𝛽𝑋𝑖を代入します。

𝐸(𝐶) =𝑐𝑜 +𝑛𝑖=1𝑐𝑖𝐸(𝑌𝑖)

=𝑐0 +𝑛𝑖=1𝑐𝑖(𝛼 +𝛽𝑋𝑖)

=𝑐0 +𝛼𝑛𝑖=1𝑐𝑖 +𝛽𝑛𝑖1𝑐𝑖𝑋𝑖

Cの期待値𝐸(𝐶)𝛽になるためには、ウエートcに関して以下の条件が必要です。これが不偏性の条件になります。

𝑐𝑜 =0,𝑛𝑖=1𝑐𝑖 =0,𝑛𝑖=1𝑐𝑖𝑋𝑖 =1

この条件が満たされれば、Cの期待値𝐸(𝐶)𝛽になります。

𝐸(𝐶) =𝛽

不偏性の条件

Cの期待値が𝛽になるために、ウエートcに関して以下の条件が必要です。これが不偏性の条件になります。

𝑐𝑜 =0,𝑛𝑖=1𝑐𝑖 =0,𝑛𝑖=1𝑐𝑖𝑋𝑖 =1

最小二乗法の場合のウエートは以下で表されます。これが不偏性の条件を満たしているかどうかを一つ一つ見ていきます。

ˆ𝛽 =𝑛𝑛=1𝑤𝑖𝑌𝑖

𝑤𝑖 =(𝑋𝑖¯𝑋𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

最小二乗法が不偏性の条件を満たすためには以下の条件が必要です。𝑐𝑖𝑤𝑖に変えただけです。

𝑐𝑜 =0,𝑛𝑖=1𝑤𝑖 =0,𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑋𝑖 =1

𝑐0 =0について

ˆ𝛽 =𝑛𝑛=1𝑤𝑖𝑌𝑖の式に定数項はないので、𝑐0 =0は満たされています。

𝑛𝑖=1 𝑤𝑖0について

ウエート𝑤𝑖の総和がゼロ」は以下のように満たされています。

𝑛𝑖=1𝑤𝑖 =𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

=𝑛𝑖=1𝑋𝑖𝑛𝑖=1¯𝑋𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2 =0

𝑛𝑖=1 𝑤𝑖𝑋𝑖 =1について

ウエート𝑤𝑖𝑋𝑖の積の総和は1」は以下の式の変形で証明できます。

𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑋𝑖 =𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)𝑋𝑖𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)𝑋𝑖 =𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2 という偏差に関する公式のうち「偏差の二乗和」を使うと、以下の式となります。

=𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2 =1

以上で、最小二乗法が不偏性を持つことが証明されました。

最良線形不偏推定量

最後に、線形不偏推定量の中で、最も分散が小さいことを証明します。最小二乗法のウエート以外の一般的な線形推定量を表すために、最小二乗法のウエート𝑤𝑖𝑑𝑖を加えたウエート𝑐𝑖を考えます。𝑐𝑖 =𝑤𝑖 +𝑑𝑖です。𝑑𝑖が非負になることが証明できれば、最小二乗法以外の線形推定量の分散は、最小二乗法より大きいことが証明できます。

まず、この一般的な線形推定量が不偏性を持つための条件を導きだします。

一般的な推定量の不偏性の条件

この推定量を変形していきます。最後の式には、𝑌𝑖 =𝛼 +𝛽𝑋𝑖 +𝑢𝑖を代入しています。

˜𝛽 =𝑛𝑖=1𝑐𝑖𝑌𝑖

=𝑛𝑖=1(𝑤𝑖 +𝑑𝑖)𝑌𝑖

=𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑌𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑌𝑖 

=𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝛼 +𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝛽𝑋𝑖 +𝑛𝑖=1 +𝑤𝑖𝑢𝑖𝑛𝑖=1 +𝑑𝑖𝛼 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛽𝑋𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑢𝑖

不偏性の項で調べたように、最小二乗法のウエート𝑤𝑖には以下の性質があります。

  • 𝑛𝑖=1 𝑤𝑖
  • 𝑛𝑖=1 𝑤𝑖𝑋𝑖 =1

これを使うと上記式の第1項と第2項は以下のようになります。

𝑤𝑖𝛼 =𝛼𝑤𝑖 =0

𝑤𝑖𝛽𝑋𝑖 =𝛽𝑤𝑖𝑋𝑖 =𝛽

これを反映すると以下の式になります。

˜𝛽 =𝛽 +𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑢𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛼 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛽𝑋𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑢𝑖

期待値をとると、誤差項の平均はゼロなので、𝐸(𝑢𝑖)=0になります。

𝐸(˜𝛽) =𝐸[𝛽+𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑢𝑖+𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛼+𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛽𝑋𝑖+𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑢𝑖]

=𝛽 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛼 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛽𝑋𝑖

=𝛽 +𝛼𝑛𝑖=1𝑑𝑖 +𝛽𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑋𝑖

そしてこれが不偏推定量になるためには、上の式が𝛽になる必要があるので、𝑑𝑖に制約が加わります。

𝑑𝑖に関する不偏性の条件は、 𝑛𝑖=1𝑑𝑖 =0,𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑋𝑖 =0です。

線形不偏推定量の分散

線形不偏推定量の一般形について、以下の形から出発します。上記で考えたのは、線形推定量でしたが、今回は線形不偏推定量なので、ˇ𝛽と記号を変えました。

ˇ𝛽 =𝑛𝑖=1𝑐𝑖𝑌𝑖

=𝑛𝑖=1(𝑤𝑖 +𝑑𝑖)𝑌𝑖

これを変形すると、以下の形になりました(上記不偏性の条件参照)。

ˇ𝛽 =𝛽 +𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑢𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛼 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝛽𝑋𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑢𝑖

不偏性の条件である、 𝑛𝑖=1𝑑𝑖 =0,𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑋𝑖 =0を代入すると、より簡単な式になります。

ˇ𝛽 =𝛽 +𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑢𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑢𝑖

この推定量の分散を求めます。最後の式の変形には(𝑛𝑖=1𝑋𝑖)2 =𝑛𝑖=1𝑛𝑗=1𝑋𝑖𝑋𝑗 という2重和の公式を使っています。

𝜎2ˇ𝛽 =𝐸(ˇ𝛽𝛽)2

=𝐸[𝛽+𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑢𝑖+𝑛𝑖=1𝑑𝑖𝑢𝑖𝛽]2

=𝐸[(𝑤𝑖+𝑑𝑖)𝑢𝑖]2

=𝐸[𝑛𝑖=1(𝑤𝑖+𝑑𝑖)2𝑢2𝑖 +𝑖𝑗(𝑤𝑖 +𝑑𝑖)(𝑤𝑗 +𝑑𝑗)𝑢𝑖𝑢𝑗]

誤差項に𝐸(𝑢𝑖𝑢𝑗)=0(𝑖 𝑗 について)を仮定すると、第2項は0になります。

=𝐸[𝑛𝑖=1(𝑤𝑖+𝑑𝑖)2𝑢2𝑖]

𝐸(𝑢2𝑖)は常に𝜎2なので、かっこの前に出すことができます。

=𝐸[𝑛𝑖=1(𝑤𝑖+𝑑𝑖)2𝑢2𝑖]

=𝐸(𝑢2𝑖)𝑛𝑖=1(𝑤𝑖+𝑑𝑖)2

=𝜎2(𝑛𝑖=1𝑤2𝑖 +2𝑛𝑖=1𝑤𝑖𝑑𝑖 +𝑛𝑖=1𝑑2𝑖)

𝑤2𝑖 について

ウエート𝑤𝑖の二乗和に𝜎2は、最小二乗法の誤差項の分散になります。

𝑤2𝑖 =(𝑋𝑖¯𝑋(𝑋𝑖¯𝑋)2)2

=(𝑋𝑖¯𝑋)2((𝑋𝑖¯𝑋)2)2

=1𝑛𝑖=1(𝑋𝑖¯𝑋)2

𝜎2𝑤2𝑖 =𝜎2(𝑋𝑖¯𝑋)2 =𝜎2ˆ𝛽

𝑤𝑖𝑑𝑖について 

この項は、不偏性の条件である𝑑𝑖 =0,𝑑𝑖𝑋𝑖 =0を使うとゼロになることがわかります。

𝑑𝑖𝑤𝑖 =𝑑𝑖((𝑥𝑖ˆ𝑋)(𝑋𝑖ˆ𝑋)2) 

=𝑑𝑖𝑋𝑖¯𝑋𝑑𝑖(𝑋𝑖¯𝑋)2 =0

最終的な分散の式

𝜎2ˇ𝛽 =𝜎2ˆ𝛽 +𝜎2𝑑2𝑖

𝑑2𝑖は負にならないので、一般的な線形不偏推定量の分散は、最小二乗法の推定量の分散と等しいか、大きいということなります。このことから、最小二乗法の推定量の分散が最も小さいということが証明されました。

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