購買力平価はOECDやWDIで発表されていますが、年次データしかありません。
月次で購買力平価を求めるには、日米の物価データがあればできるので、計算することができます。
そこで、米国のデータベースFREDを使って、CPI(消費者物価指数)から購買力平価を計算してみました。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
購買力平価の計算法
購買力平価は、同一商品に関する2つの国の値段の比から導きだすものです。リンゴが日本で1個200円、米国で2ドルなら、1ドル=100円ということになります。すべての商品の情報が簡単に手に入ればそれらを調べられますが、商品の数は無数にあります。また、両国で同じ商品があるとは限りません。
そこで、物価指数どうしを比べます。消費者物価指数、GDPデフレーター、企業物価指数、輸出物価指数などさまざまな物価指数で購買力平価を作ることが出来ます。今回は消費者物価指数どうしを比べます。以下の式が基本です。
$ 購買力平価(指数)=\dfrac{日本の消費者物価指数}{米国の消費者物価指数}$
FREDを使用
米国のデータも使うので、セントルイス連銀のFREDを使用します。FREDはFederal Reserve Economic Dataの略で、82万系列ものデータを無料でダウンロードできます。米国に限らず日本のデータもダウンロードできます。
ダウンロードするデータは3つ
購買力平価を計算するためには、日米の消費者物価が必要です。CPIで検索すると、さまざまな消費者物価指数がでてきますが、以下のCPIを使います。日米のもっとも幅広い財・サービスをカバーしている指数です。
- Consumer Price Index for All Urban Consumers: All Items in U.S. City Average (CPIAUCSL)
- Consumer Price Index of All Items in Japan (JPNCPIALLMINMEI)
次は、市場で取引される為替レートのデータです。為替レートは統計ダッシュボードや日銀のホームページからもダウンロードできますが、FREDでは長期間のダウンロードが可能です。
普通にダウンロードすると、日次データになるので、「2 other formats」 で月次(Monthly)を選びます。1971年1月から直近までデータがあることがわかります。
これでデータは揃いました。
購買力平価の計算
購買力平価は、それぞれの国の物価の比です。為替レートは1ドルあたりで表示しているので、日本の消費者物価指数を米国の消費者物価指数で割れば計算できます。
$ 購買力平価(指数)=\dfrac{日本の消費者物価指数}{米国の消費者物価指数} $
この指数は、動きは購買力平価ですが、水準は定まっていません。消費者物価指数は基準年を100とする指数であり、円やドルの水準を表していないためです。
仮に、「変動相場制が始まった1971年2月は、実際の為替レートと購買力平価が等しかった」とすると、以下の計算をすると、購買力平価が計算できます。
$ 購買力平価= \dfrac{日本の消費者物価指数}{米国の消費者物価指数}×\dfrac{1971/2の為替レート}{1971/2の購買力平価指数} $
購買力平価で為替レートの水準を議論する場合、購買力平価と実際の為替レートが等しかったのはいつか、が最も重要な点です。これにはさまざまな考え方があるでしょう。変動相場制が始まった直後、国際収支が均等した時、金利差が小さかった時などが考えられます。
現在はやはり円安気味
今回作った購買力平価と、実際の購買力平価をグラフに描くと以下のようになります。
2022年4月時点での購買力平価は116円90銭でした。現実の為替レートは急激に円安方向に振れています。これまでの流れから考えて、現在が過度に円安気味の可能性はあります。