暗号資産について、素材を集めておきます。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
ビットコインについて
ビットコインを考案したサトシ・ナカモトの伝説的な論文です。2009年1月に公開されました。
ビットコインの対円の相場
急激に価格が上昇した後、急落、急上昇を繰り返し、現在は400万BTCくらいになっています。2015年に比べておおむね100倍です。
日付 | BTC/円 |
2015年11月27日 | 4万4000 |
2019年1月26日 | 39万 |
2020年9月11日 | 110万9000 |
2021年11月12日 | 733万7000 |
2022年6月17日 | 255万8000 |
2023年10月9日 | 415万182 |
日本銀行の解説
日本銀行は、おしえて!日銀、という解説コーナーの中で以下のように説明しています。
「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる(2)電子的に記録され、移転できる(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的な暗号資産には、ビットコインやイーサリアムなどがあります。 暗号資産は、銀行等の第三者を介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとして、高い注目を集めました。一般に、暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができます。暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行うことができます。暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された、法定通貨ではありません。また、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。また、暗号資産に関する詐欺などの事例も数多く報告されていますので、注意が必要です。詳しくは、金融庁・消費者庁・警察庁による「暗号資産に関するトラブルにご注意ください!」をご覧ください(下記「参考」のリンクからご覧いただけます)。
教えて!日銀より
法定通貨にしたエルサルバドル
エルサルバドルは2021年9月、ビットコインを法定通貨にしました。駐日エルサルバドル大使によると、導入した理由は以下の3つです。
- 銀行口座を持たない人でも使える
- 海外送金の手数料が低くなる
- 知名度が高く安定性がある
米ドルも法定通貨で、米ドル、ビットコインどちらを使ってもいいというものです。
ブケレ政権は21年9月に暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨に定めた。だが価格が乱高下するビットコインはリスクが高いため、決済手段として定着していない。同年に表明したビットコインと連動した国債を発行する計画も遅れている。
2023年7月11日付け 日本経済新聞
中央銀行デジタル通貨について
世界中の中央銀行では、中央銀行デジタル通貨が検討されています。日本銀行にも以下のサイトがあります。
「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」には様々な論点について書いてありますが、考慮すべき点として、物価と経済の安定については次のように書いてあります。CBDCとは中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)のことです。
(1)物価の安定や金融システムの安定との関係
わが国では、日本銀行が、現金と日本銀行当座預金からなる中央銀行マネーを一元的に供給し、民間銀行は、中央銀行マネーを核とする信用創造を通じて預金通貨を供給している。
こうした「通貨供給の二層構造」のもとで、CBDCを、現在の銀行券と同じく、中央銀行預け金との交換によって生じる日本銀行の直接の負債と位置付けるのであれば、中央銀行マネー(マネタリーベース)と銀行預金の関係はこれまでと同様である。また、CBDCの発行自体が、直ちに民間銀行の信用創造機能に影響を及ぼすことにはならない。
一方、CBDCの発行により、銀行預金からCBDCへの大幅な資金シフトが生じれば、民間銀行の金融仲介機能に影響を及ぼすことになる。例えば、銀行預金よりもCBDCの利便性が高くなると、銀行預金は大きく減少してしまい、そのことを通じて銀行の信用創造が抑制されるとの指摘がある。こうした点は、金融政策の効果波及ルートに対する影響という点でも注意を要する。
安定的・効率的な決済システムは、日々の生活に不可欠なインフラであるのと同時に、日本銀行が、物価の安定と金融システムの安定という目的を実現するための政策的な基盤でもある。金融政策の有効性や金融システムの安定性の観点から、CBDCの機能要件や経済的な設計(発行額・保有額の制限や付利の有無等)については慎重な考慮が必要である。
経済学的な論点
市場の効率性
市場が効率的とは、利用可能な情報が価格に反映されていることを表しますが、暗号資産の市場は、効率的かどうかを検証します。
ボラティリティ
暗号資産は、ほかの資産に比べて、ボラティリティ(価格の変動)が大きいですが、ボラティリティがなぜ大きいのかを解明します。
通貨としての側面
暗号資産の便益として、スマートコントラクト(第三者を介さずに契約が自動的に行われる機能)により低品質の商品を買わないで済むことを考慮し、一般均衡分析で暗号資産の特徴を考えます。
また、スマートコントラクトを使うことにより共謀が起こりえることを前提に、ゲーム理論で、どのような制度がよいのかを検討します。
規制
違法薬物購入の決済手段として暗号資産が使われたことなどから、規制について研究します。
石田・服部「暗号資産の展開と規制」『経済学でみる新しい決済と金融』日本評論社より。
参考文献
坂井豊貴『暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)』
著者が前書きでこの本の特徴を3つ挙げていますが、その通りだと思います。
- 経済学や計算機科学の新しい学術論文や古典の文献をふまえている。
- ビットコインの説明に関し、機械が決めていることと、人間が決めていることの区別が明確。
- 「すでに社会は変わっている」と誤解しないよう説明してある。
上田岳弘「ニムロッド (講談社文庫)」
暗号資産に関する小説です。主人公は中本哲史です。
仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。
amazonの説明
中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。
小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。……
やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。 ……
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