経済統計の使い方
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経済学

【経済学】長期費用曲線と短期費用曲線の違いのまとめ-総費用、平均費用と限界費用

  • 長期総費用曲線は、短期総費用曲線の包絡線
  • 長期平均費用曲線は短期平均費用曲線の包絡線
  • 長期限界費用曲線は、短期限界費用曲線より傾きが小さい。
  • 費用が最小化できる生産量の短期費用曲線での平均費用曲線、限界費用曲線は等しい。

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

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長期費用曲線と短期費用曲線の違い

短期と長期の違いは、さまざまな定義があります。金利の世界では、長期金利は1年以上、短期金利は1年未満の金利を指します。また、マクロ経済学の世界では価格の調整が行われない状況を短期、価格調整が行われる時間がある場合を長期と呼びます。

ミクロ経済学の費用関数の場合は、資本設備の大きさが変えられるかどうかで短期と長期を区別します。企業が生産する場合、生産に必要なのは資本設備と労働力です。短期では、資本設備を一定として、労働力が増えると生産がどのくらい増えるのかを考えます。

ミクロ経済学の費用関数について、長期と短期の違いをまとめると、以下のようになります。


短期長期
定義資本設備が一定資本設備の規模を変えられる
総費用曲線徐々に傾きが急になる。短期総費用曲線の最下点を結んだ曲線
平均費用曲線U字型U字型で、短期平均費用曲線の最下点を結んだ曲線(包絡線)
限界費用曲線右上がり右上がりだが、短期限界費用曲線より傾きが緩やか

生産量が異なる場合の生産方法の違い

生産量が変わると設備の量はどのように変わるでしょうか。

  • 小さい機械
  • 大きな機械

の2つがあった時、費用関数はどう変わるでしょうか。小さな機械は固定費が少なくて済みます。一方、大量に生産しようとすると生産能力が低いため限界費用が急激に上がります。

大きな機械は、固定費がかかりますが、生産能力が高いため、限界費用の増加は緩やかです。

短期総費用曲線と長期総費用曲線の違い

これらを図にすると以下のようになります。短期費用Aが、最も小さい機械の場合です。固定費用がほとんどないですが、総費用曲線の傾き(=限界費用)が大きいです。

短期総費用Bは中間の場合です。短期総費用Cが、最も大きい機械の場合です。固定費用はかかりますが、限界費用はそれほど大きくなりません。

このように、機械の大小によって総費用曲線は変わりますが、どの機械でも使える場合、企業はどのように行動するでしょうか。利益の最大化を考えれば、それぞれの生産量で最も費用がかからない設備を選ぶでしょう。赤の曲線が長期総費用曲線になります(多少青線と赤線がずれてますが、重なっているものとして考えてください)。

二輪車に例えると、距離が短い場合は原付、中距離なら中型バイク、長距離なら大型バイクを選ぶ、といったところでしょうか。

平均費用曲線の違い

短期総費用曲線も、長期総費用曲線も形としては同じような形をしています。生産が大きくなるに連れて限界費用が大きくなる(限界費用逓増の法則)ので、徐々に傾きが急になるような曲線です。

また、長期の総費用は短期の総費用のうち費用が少なくなる資本設備を使っています。つまり、以下の式が成り立ちます。

                短期の総費用>長期の総費用

   両辺を生産量で割ると、

                短期の平均費用>長期の平均費用

 が成り立ちます。つまり、短期平均費用の最も小さい点を結んだものが長期平均費用曲線になります。長期平均費用曲線の最低点を短期平均費用曲線は通りますが、短期平均費用の最低点を長期平均費用曲線が通るとは限らないことがわかります。

 

限界費用曲線の違い

短期の総費用曲線と長期の総費用曲線を見ると、長期総費用曲線の方が緩やかです。このため、長期限界費用曲線は、短期限界費用曲線よりも緩やかになるということがわかります。

平均費用曲線と限界費用曲線の関係

最後に長期と短期の平均費用曲線と限界費用曲線の関係を見てみましょう。

注目するのは、資本設備を自由に変えた時の最適な生産量での費用です。長期総費用関数は、最適な最適な資本設備の規模で生産されているので、それぞれの生産量に対する長期総費用は最適な資本設備で生産されています。このため、最適な資本設備に対応する短期総費用曲線と長期総費用曲線は一致し、短期平均費用曲線と長期平均費用曲線も一致します。

その生産量では長期総費用曲線と短期総費用曲線が一致しているので、短期限界費用と長期限界費用も一致しています。つまり、設備が最適生産量にある場合は、

  • 短期総費用=長期総費用
  • 短期平均費用=長期平均費用
  • 短期限界費用=長期限界費用

が成り立っていることを示しています。

ここでも、注意したいことは、短期平均費用の最低点を長期平均費用が通らないこと、短期平均費用の最低点に対応する短期限界費用は長期限界費用曲線を通らないことがわかります。

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