山が動いた!はかなり大袈裟ですが、内閣府が発表した新景気動向指数によると、景気の山が2018年10月から2019年9月へと約1年後ろに移動します。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
山は1年後ろに
新指数では、景気の山は2019年9月になります。従来の景気動向指数では2018年10月が景気の山なので、景気のピークが後ろにずれることになります。
2018年から2019年にかけて、製造業の景気が悪かった一方、オリンピック開催前の盛り上がりで、サービス業は相対的に好調でした。既存の景気動向指数ではそこが把握できていませんでしたが、新指数ではサービス業関連指標が多く採用されたことで、サービス景気好調の影響を取り込むことができました。
この指数は当面参考指数という位置づけで、現行の景気動向指数がメインの指標であることは変わらないということです。
新指数の特徴
新指数は、これまでの景気動向指数の作成法を基本的には維持しながら、採用指標を変えたものになります。特徴は以下の3つです。
- サービス指標が増えた
- 指標のバリエーションが広い
- 先行指数、遅行指数はない
それでは、3つの特徴を見ていきましょう。
サービス業関連指標が増えた
現行指数よりもサービス関連指標が増えました。特に第3次産業活動指数を取り入れているところが特徴です。
新指数 | 現行指数 |
第3次産業活動指数(広義対個人サービス) | 商業販売額(小売業) |
第3次産業活動指数(広義対事業所サービス) | 商業販売額(卸売業) |
第3次産業活動指数(広義非選択的個人向けサービス) | |
第3次産業活動指数(広義し好的個人向けサービス) | |
実質小売販売額 |
指標のバリエーションが広い
GDP統計で使われる用語である「三面等価」を基本にしています。生産面、分配面、支出面です。既存の景気動向指数はウエートが同じですが、経済における重要度に応じてウエートを変えています。
生産面では、建設出来高が採用され、分配面では実質総雇用者所得が採用、支出面では輸出数量指数に加え実質サービス輸出が採用されており、現行指数よりも幅が広がっています。
先行指数、遅行指数はない
現行景気動向指数は、景気に一致する一致指数のほか、先行指数、遅行指数は作成されていません。資料では「引き続き検討」と書かれています。ただ、同様の考え方で両指数を作るのは、候補の指標が少なく難しそうです。
新指数の問題点
問題点としては以下のものが挙げらます。
発表が遅い
第3次産業活動指数の難点は、発表が遅いことです。この指標を全面的に使うことによって、新指標の公表も第3次産業活動指数公表の数営業日後になります。現指数よりも2週間程度発表が遅くなります。
名目と実質の混在
経済学的には、景気の量感を表すものは実質です。建設出来高、営業利益、無形固定資産(ソフトウエア投資)は金額ベースのデータなので名目値です。実質化が望ましいです。
四半期系列が入っている
指数は月次指数ですが、営業利益は四半期指数です。毎月発表されないうえに、月次化するには加工する必要があります。実際に新指数の発表を始めると、四半期ごとに、営業利益のデータが入ってくることになり、指数に断層ができる可能性があります。