経済構造実態調査は、2019年に調査を開始した新しい統計です。GDP統計の精度向上を図るために、これまでの統計にない特徴を持っています。
経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。
経済構造実態調査とは…
この統計ができるまで、日本にはGDP統計を作成するための基礎統計が足りませんでした。必要だったのは企業活動を年次で捉える統計です。法人企業統計は、売上高や利益はわかりますが、付加価値がわかりません。工業統計は詳細な統計ですが、サービス業が捉えられていません。すべての産業を年次でとらえる統計としてに、経済構造実態調査は作成されました。
3つの特徴
経済構造実態調査にはこれまでの統計になかった3つの大きな特徴があります。
- 周期の速さ
- GDP統計との親和性
- 全産業の調査
周期の速さ
1つ目は、構造統計(ある一時点での詳しい統計)としては周期が1年と速いことです。企業活動を包括的に捉える統計として最も詳しいのは「経済センサス-活動調査」です。センサスとは「全数調査」のことで、すべての企業を調査します。正確な統計ですが、5年に1度の調査で、調査しない年(中間年と呼びます)との断層が問題になっていました。「経済構造実態調査」が中間年を埋める統計となります。
GDP統計との親和性
2つ目は、GDP作成に適した統計だということです。企業統計としては、財務省の「法人企業統計」があり、売上高や設備投資、経常利益などが把握できます。しかし、GDPを計算するためには、ある産業がどのような商品を使ったか、そしてどのような商品を供給したか、という情報が必要となります。「経済構造実態調査」では産業の連関を示す投入・産出構造なども調べています。
全産業の調査
3つ目は、全産業に関する統計だということです。これまでは、業種ごとにばらばらに統計が作成されていました。サービス業は、「サービス産業動向調査―拡大調査-」と「特定サービス産業実態調査」、卸売業と小売業は「商業統計調査」です。まず、これらの3統計を統合したうえで、製造業についても調査して2019年から「経済構造実態調査」が始まりました。2022年にはさらに「工業統計調査」を統合し、建設業や農業についても調査を始め、ほぼ全産業について調査をすることになっています。
「経済構造実態調査」ができたことで、毎年、全産業ベースでGDPに必要なデータを調査できるようになりました。GDP統計の精度改善が期待できます。
発表スケジュール
期待をになった調査ですが、それが実際にGDP統計に役に立っているのかどうかはこれから検証していく必要があります。
これまでに発表されてきた統計については、総務省のホームページを見て下さい。
最も早く発表される1次集計は毎年3月に発表されています。
対象年 | 集計檀家 | 発表月 |
2019年調査 | 1次集計 | 2020年3月 |
2次集計 | 2020年7月 | |
3次集計 | 2020年10月 | |
2020年調査 | 1次集計 | 2021年3月 |
2次集計 | 2021年7月 | |
3次集計 | 2021年10月 |
さらに詳しく
さらに詳しい解説を、国際経済交流財団のJapanSPTLIGHT2022年5-6月号に書いてるので参考にしてください。