経済統計の使い方
統計初心者の社会人向けに、経済データの解説をしています。「まとめページ」をご覧くだされば、全体的な内容がわかると思います。
経済学

【経済学】経済学特有の言葉|普通とは違う使い方をする言葉

日常生活ではあまり使わないけれど、経済学ではよく使う言葉があります。それについて、説明しておきます。

経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。

【経済学】経済学のまとめ 経済学の基本的な考え方について説明しました。 経済統計の使い方では、統計データの入手法から分析法まで解説しています。 ...

経済主体

経済主体とは、同じような特徴を持ったグループを集めたもので、家計、企業、政府の3つの経済主体があります。

家計

家計という言葉はわかりにいですが、「家庭」と同じ意味です。企業に労働力を提供して賃金を得て、それを消費に使うという行動をします。

企業

企業は財やサービスを提供する主体です。家計から労働力を受け取り、賃金を払います。

政府

政府は、財務省や経済産業省などの中央政府と都道府県庁や市役所などの地方政府の両方を含みます。

各主体の関係

家計と政府との関係では、家計は政府に税金(所得税、消費税など)を納め、年金の保険料など社会保障関係の保険料を支払います。その代わりに、行政上のさまざまなサービスや橋や道路などの公共財を受け取り、高齢になると年金を受け取ります。

企業と政府の関係では、企業は政府に税金(法人税)を納め、代わりに家計とおなじように公共財を受け取ります。

最後に家計と企業の関係では、企業は家計から労働者を雇い、代わりに給料を払うという関係にあります。また、企業は生産者、家計は消費者という立場から、企業が生産したものを家計が買うという関係にもあります。

需要と供給

経済学は需要と供給に分けて考えることが基本です。需要とは、人間の欲望を表したもの、供給とはそれを得るための努力と考えればよいでしょう。需要と供給が出会うところは市場で、両者の希望が満足されるように価格が決まります。

需要と供給が出会う場は、商品市場だけにとどまりません。労働力を提供する側と需要する側が出会うのが労働市場です。お金を貸す側と借りる側が出会うのが金融市場です。

財とサービス

経済学特有の言葉として、財(財貨)とサービスという言葉があります。企業は自動車やパソコンなどさまざまなものを生産しますが、目に見えないものを生産する企業もあります。ホテルのサービスは、泊まることが主であって、何かをもらうわけではありません。目に見えるものは財、目に見えないものはサービスという風に区別しています。財とは「モノ」と考えてもいいでしょう。経済活動によって生産されるものすべてを表す言葉として、「財・サービス」があります。

財政政策と金融政策

政府が景気変動を小さくする手段は大きく分けて、財政政策と金融政策があります。金融政策は金利やお金の量を調節することによって景気を調整しようとするもので、財政政策は税金や国の支払いを調節するものです。財政政策は政府が、金融政策は日本銀行が担当しています。

拡張的財政政策とは、政府支出を収入より多くして、景気を良くしようとするものです。公共事業など政府支出を増やす場合と減税のように収入を減らす場合があります。

もう一つが金融政策です。具体的には金利を上げたり下げたりして景気を調節します。財政政策が予算の作成を伴うのに対し、政策金利の水準は日本銀行独自の判断で決めることができます。景気の良いときには、景気が過熱してインフレが起こるのを防ぐために金利を上げ、景気が悪くなると金利を下げて対応しています。

3つのタイムラグ

不況になれば早めに対策を打つべきなのに、なぜそれが遅れるのでしょうか。経済政策の3つのタイム・ラグ(時間のずれ)で説明するのがわかりやすいでしょう。3つのタイムラグとは①認知ラグ②政策ラグ③効果ラグ――で、経済学者フリードマンが財政政策の問題点として指摘したものです。

認知ラグとは、不況だと気が付くまでの時間の遅れです。3月の経済統計は3月が終わると同時に発表されるわけではありません。通常1、2ヵ月遅れます。そのうえ、月々の動きがぎくしゃくしている経済統計では全体の流れを把握するにはそれから数ヵ月はかかります。こうしたことが、好況か不況かの判断を遅らせてしまうのです。

政策ラグとは、政府が対策を打とうと決めてから実施されるまでのラグです。経済対策は多くの場合財政支出を伴います。政府がお金を支出するには、予算を作って国会で審議してやっと実際に支出されます。こういう手続きを踏むのにはかなり時間がかかることは容易に想像できます。

最後のラグは効果ラグです。実際に政府が減税や公共投資を行っても、それが日本経済全体に波及するにはかなりの時間がかかります。道路やダムも一日にしてできないでしょう。こうしたラグがあるため、政府の対策は後手に回りやすいのです。

景気局面

景気循環の局面を表す場合、2つの表現法があります。一つは上向きか下向きかという方向で景気を分けるものです。景気が上向きである「拡大局面」と、下向きの「後退局局面」です。景気の後退局面から景気の拡大局面への転換する点を景気の「谷」と呼び、景気拡大局面から景気後退局面へ転換する点を景気の「山」と呼びます。

さらに、景気の拡大局面、後退局面について細かくみると、改善→拡大→弱含み→悪化→底入れ→改善という循環が存在します。

景気は「谷」を過ぎると拡大局面になります。「谷」を過ぎれば広い意味では拡大局面ですが、「谷」というのは最も景気の低いところです。そこから多少良くなっても「拡大」という語感がそぐわない場合が多いようです。こうした時には最悪期を脱したという意味でまず、「持ち直し」という言葉が使われ、さらに「改善」「回復」という言葉を使います。さらに景気が良くなれば、景気が「拡大」すると呼べるような状況になるでしょう。拡大局面はいずれ終わりを告げ、景気は「山」を迎えます。

景気が「山」を過ぎると弱含みの状態です。景気が「山」を超えたかに見えてももう一度拡大する場合もあります。完全に悪化するとはわからないときに使うのが「弱含み」という言葉です。景気が悪くなったことが確認できれば「悪化」と呼びます。景気の「谷」に達した段階が底入れです。

底入れ後の景気には2種類考えられます。水準は低いものの徐々に景気が良くなっていれば、「底固め」と呼びます。景気の上向きが確認されれば「底離れ」と呼びます。

一方、いったん上向いたかに見えた景気がされに悪くなる場合もあります。「谷」に達したものの、一向に上向かない状態を「底ばい」と呼びます。その状態からさらに悪くなる場合は「底割れ」です。このケースでは、当初「谷」と思われていたよりもさらに景気が悪い状態になるということを示しています。

好況と不況

「好況」「不況」という言い方もします。これは、方向ではなく、経済の平均的な水準に比べて良いか悪いかを判断するものです。経済の平均的な水準よりも良い状態を「好況」と呼び、「不況」は悪い状態を指します。

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