EViewsでX12-ARIMAによる季節調整をかける方法を説明します。
X12-ARIMAは、米国センサス局が開発した季節調整法です。季節調整をかけるには、中心移動平均をとる必要があり、予測値が必要になります。予測をARIMAモデルで行うため、ARIMAとついています。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
系列オブジェクトのメニューから
季節調整法である、X12-ARIMAの使い方について説明します。EViewsでは系列ごとに季節調整をかけることができます。系列(Series)オブジェクトをクリックすると、系列のウインドウが開きます。
[Proc]→[Seasonal Adjustment]→[Census X12…]
上記手順でメニューを選ぶと、X12-ARIMA用のウインドウが表示されます。いくつかのタグがあるので、それぞれについて解説します。
Seasonal adjustment(季節調整)
X11 Method
普通の系列は乗法形(Multiplicative)、在庫などマイナスのあるデータは加法形(Additive)を選びます。
Trend Filter(Henderson)
系列に移動平均をかけてトレンドを作る方法です。Autoで問題ないです。
Seasonal Filter
季節成分を取り出すためのフィルターです。Autoで問題ないです。
Component Series to Save
季節調整値を取り出すときは、Final Seasonally Adjusted Seriesを選びます。元の変数に_SAがついた変数として保存されます。
Trading day/Holiday(曜日と祝日)
1ヵ月(1四半期)のなかでの曜日数の違いや祝日、祭日、うるう年の変動を調整します。
Adjustment Options
ARIMAモデルを使って予測した数値を季節調整に使う場合は、Adjust in ARIMA stepを選びます。
Trading Day Effects
・No trading day effects 営業日調整をしない
・Flow day-of-week/leap year effects フローデ-タで曜日調整とうるう年調整をする
・Flow weekday-weekend/leap year effectsフローデータで週末調整(土日)とうるう年調整をする
・ Stock day-of-week ストックデータで、曜日調整する
Holodays(Flow)
Holodaysは米国特有のものなので、日本のデータには使う必要はないです。
ARIMA Options(ARIMAモデル)
Data Transformation
ARIMAモデルで推計するとき、変数を変換するかどうかを決めます。
Auto
対数に変換するかどうかを推計の当てはまり具合で自動的に判定し、推計結果の良いほうを採用すします。これがおすすめです。
logistic
変数yをlog(y/(1-y))の形に変換し、変数が0から1の間を動くようにする。対数への変換でない点に注意が必要です。
Box-Cox power
ボックスコックス変換を行います。ゼロの場合は、対数をとった場合となります。
ARIMA Spec
No ARIMA
Specify in line 特定の次数を指定する
(1,1,1)(1,0,1)
最初のカッコ内が、変数のARIMAモデルの次数、次のカッコ内は季節指数のARIMAモデルの次数になります。
Select from file 次数候補のファイルの中から選ぶ
次数ファイルに入っている候補の中から次数を選択します。Eviewsに標準で添付されている次数ファイルは次の次数が入っています。Xで区切ることによって、次数候補をさらに増やすこともできます。
(0 1 1)(0 1 1) *
(0 1 2)(0 1 1) X
(2 1 0)(0 1 1) X
(0 2 2)(0 1 1) X
(2 1 2)(0 1 1)
Outliers(異常値)
系列の中の異常値などを取り除きます。制度的な要因などで、系列が明らかに変動している場合に指定します。国民経済計算では、消費税の導入、イラク戦争、医療制度変更、介護保険制度導入などの要因で異常値を設定しています(内閣府ホームページ、国民経済計算(SNA)のページ、「季節調整用ARIMAモデル設定一覧」参照)。
Outlier Dates
異常値がある時期を設定するためには、「Add」のボタンを押します。次のような画面が出てくるので、異常値の種類と時期を選びます。
「Additive Outlier」は一時的な変動が起こった場合に使います。消費税の駆け込み需要が起こった場合などです。「Level Shift」は、ある時点以降、変数の水準が変わった場合に使います。消費者物価指数が消費税導入によって水準が変わる場合などです。「Temporary Level Change」は一時的に変数が変動あと、その影響が指数的に減衰していく場合です。「Ramp Effect」は2期間を指定し、その期間中徐々に影響が大きくなった後、再び小さくなる場合です。
Diagnostics(診断)
季節調整した結果を診断します。
Stability Analysis of Seasonals
Sliding spans
同じサンプル数で、期間をずらして季節要因に安定性があるかどうかを調べます。
Historical revisions
新たに変数が加わったときに、季節調整値がどの程度変わるかを調べます。
Other Diagnostics
Residual diagnostics
誤差に時差相関があるかどうかをチェックします。
Outlier detection
異常値があるかどうかを自動的に判定します。
Spectral plots
スペクトラル分析を行います。