米国の雇用統計は世界で最も注目される指標といっても過言ではありません。なぜでしょうか?世界で最もGDPが大きい国の景気動向が最速でわかる統計だからです。
また、失業率、賃金、労働時間など多数のデータが含まれており、分析することでさまざまなことがわかります。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
米国経済を占ううえで、雇用統計は重要です。速報性が高く、景気との連動性も高いです。景気が悪くなればレイ・オフ(一時解雇)し、景気が良くなれば雇用を増やすというように、雇用情勢が景気に敏感に反応するためです。また、毎月のブレも少ないので、景気が良くなっているのか悪くなっているかの方向感もわかりやすいです。
最初にデータを見る場合は、労働省労働統計局のDATA TOOLS→U.S.Economy at a Glance(米国経済早わかり)を見るとよいと思います。雇用統計で重要な失業率(Unemplyment Rate)、非農業雇用者数の前月比増減(Change In Payroll Employment)、時間当たり平均賃金(Average Hourly Earnings)が表示されます。それぞれの指標をクリックすると、さらに細かな情報を得ることができます。
失業率
失業率は、失業者数を労働者数で割ったものです。このため、労働者数の動向にも左右されます。人口に占める労働者の割合を労働参加率と呼びます。
労働者数は、対象年齢人口のうち、働きたい人の数です。失業者数が同じでも労働者数が増えれば失業率の低下要因になります。このため、「失業率は上昇したが、雇用者数も増加した」という現象が起こることもあります。
グラフは、DATA TOOLSの労働統計局の主要系列(BLS Popular Series )の ”Civilian Unemployment (Seasonally Adjusted) – LNS13000000″ を選び、include graphs にチェックを入れて描いたものです。
非農業部門雇用者数
雇用者数は、生産力に直結します。失業率は、労働者数の人数にも左右されますが、こちらの数値はもっと直接的に企業活動を表すことになります。農業部門を除くのは、景気との連動性が低いためです。産業別にも発表されます。
景気動向との関連では、前月に比べてどれくらい増減するかが注目されます。過去の動きをみると、2010年代は毎月10万人から30万人雇用が増えていることがわかります。日本と比べると経済の拡大が続いていることがわかります。
労働統計局のサイトを使ってグラフを描くこともできますが、新型コロナウイルス感染拡大時の増減が大きすぎてほかの期間の動向がわかりにくいので、エクセルでグラフを作り直しました。
データは、DATA TOOLSの労働統計局の主要系列(BLS Popular Series )の ”Total Nonfarm Employment – Seasonally Adjusted – CES0000000001″ を選び、More Formatting Options のSelect view of the data を Column Format (縦一列にデータが並ぶ形式) に変えて、エクセル形式で出力しました。
時間当たり平均賃金
時間当たりの平均賃金のデータです約30ドルなので、1ドル=130円換算だと、時給3900円になります。高いですね。しかも増え続けています。
グラフは、DATA TOOLSの労働統計局の主要系列(BLS Popular Series )の ”Total Private Average Hourly Earnings of All Employees – Seasonally Adjusted – CES0500000003″ を選び、 include graphs にチェックを入れて描いたものです。
さまざまな統計を組み合わせて発表
失業率は、人口動態統計(Current Population Survey)という家計に対して調べる家計調査(Household Survey)調査で、雇用者数と時間当たり平均は企業に対して調べる事業所調査(Establishment Survey)です。調べる対象が違うデータを合わせて雇用統計(Current Employment Statistics)として発表しています。
雇用動向について、Wチェックしているというイメージです。
あらためて、経済が拡大している国はいいな、と思いました。
ある月のデータが翌月の第一金曜日に発表されます。1週間もかからずに、業種別の細かなデータも発表されています。データ処理の自動化が進んでいるということだと思います。
Payroll employment を 就業者数と訳す場合と雇用者数と訳す場合の両方があるようです。日本の統計では、雇用者+自営業者=就業者なので、2つは違うものです。