景気動向指数は、景気に連動して動く経済統計を合成したものです。内閣府が毎月発表しています。先行指数、一致指数、遅行指数があります。
経済統計の使い方では、経済統計の入手法から分析法まで解説しています。
指数の種類
指数は、計算法の違いでDI(ディフュージョン・インデックス)とCI(コンポジット・インデックス)があります。以前はDIが中心でしたが、現在はCIが中心的指標となっています。
説明 | 先行指数 | 一致指数 | 遅行指数 | |
CI | 指標を合成したもの | ○ | ○ | ○ |
DI | 指標の方向感を表す | ○ | ○ | ○ |
CI
CIは、構成指標を合成したもので、基準年=100の指数として表されます。先行指数、一致指数、遅行指数があります。
DI
DIは、方向性を表すものです。各指標を3ヵ月前と比べて、上昇した系列の割合を表します。すべての指標が上昇していれば、100、下降していれば0になります。
指数の見方
まずは、一致指数CIを見ておけばいいでしょう。この指数は景気の波と連動していて、景気が一循環する中で最も高い点が景気の山、最も低い点が景気の谷となります。
景気基準日付
景気動向指数をもとに、景気基準日付が決められます。景気の山や谷がいつなのかを政府が決めたものです。現在は景気の拡大期なのか後退期なのかを考えるのは景気分析の基本ですので、最新の景気基準日付の動向は抑えておきましょう。景気基準日付は「景気動向指数研究会関連」の資料から調べることができます。
景気動向指数の構成指標は「個別系列の概要」に載っており、時系列データについては、「統計表一覧」から入手できます。
CIは伸び率の合成
景気動向指数CIは伸び率を合成したものです。経済指標には変動が大きいものや小さいものがあるため、そのまま平均するのは適当ではありません。そこで、それぞれの指標について伸び率(対称変化率)を計算した後、変数それぞれが同じような範囲を動くように基準化し(基準化変化率)、その後合成します。
対称変化率
$$ 対称変化率= \frac{当月値-前月値}{(当月値+前月値)/2}×100$$
対称変化率は前月から当月が100から110に変化した場合も、110から100に変化した場合も同じ比率(9.52%)になるような変化率です。景気動向指数の構成指標の中には上昇が好景気を表す系列と、下落が好景気を表す系列があります。対称変化率では両者が同等の扱いになります。もっとも、数値は前期比伸び率とほとんど変わりません。
外れ値の排除
次に外れ値を除きます。まず四分位範囲を計算します。四分位範囲は以下の式で表されます。
$$四分位範囲=上位25%値-下位25%値$$
下位25%から上位25%までなので、全データのちょうど半分のデータが含まれている範囲です。ただ、下位25%未満、上位25%より大きいものを外れ値とするわけではなりません。外れ値が多すぎます。外れ値は、対称変化率が「四分位範囲×閾値(しきいち、いきち)」を超えたものとします。閾値は、内閣府のマニュアルでは外れ値が5%になるような値とあります。鉱工業生産指数では1.65にすると外れ値が5%となります。
トレンドの作成
次に、対称変化率のトレンドを求めます。これは、外れ値処理後の対称変化率の60ヵ月移動平均とします。5年間のゆっくりした動きをトレンドと考えるわけです。
基準化変化率
これらの情報を使って、どの系列でも同じような値の範囲を動く基準化変化率を作成します。考え方は、トレンド部分を除いたうえで、振れ幅による差を除くことです。振れ幅は四分位範囲内としてます。
基準化変化率$\hat{x}$は以下の式で表せます。 外れ値処理後の対称変化率を$x$ 、トレンドをT、四分位範囲をQとすると、以下の式です。
$$ \hat{x}=\frac{x-T }{ Q }$$
トレンドの部分がゼロに近い場合は、四分位範囲はサンプルの半分が入る範囲なので、だいたい-2から2までの大きさをとります。
系列の合成
基準化変化率が各系列でできたたら、それも使って、合成系列を復元します。復元するには上式を変形して、元の値$x$を左辺に持ってきた式は以下となります。
$$ x=T+ Q \hat{x} $$
それぞれの部分を構成指標について平均して合成変化率を求めます。
Tの平均値を$\bar{T}$、Qの平均値を$\bar{Q}$、$\hat{X}$の平均値を$\bar{x}$とすると、以下の式です。
$$ 合成変化率=\bar{T}+ \bar{Q} \bar{x} $$
どうやって採用指標を選ぶか?
景気動向指数の根底の考え方は、「景気という目に見えない流れがあって、それを各指標は反映する。各指標は個別の要因で動くこともあるが、それらを合成することで景気の流れが浮かび上がってくるはずだ」というものです。現在の一致指数採用系列は以下の10変数です。
- C1 生産指数(鉱工業)
- C2 鉱工業用生産財出荷指数
- C3 耐久消費財出荷指数
- C4 労働投入量指数(調査産業計)
- C5 投資財出荷指数(除輸送機械)
- C6 商業販売額(小売業)(前年同月比)
- C7 商業販売額(卸売業)(前年同月比)
- C8 営業利益(全産業)
- C9 有効求人倍率(除学卒)
- C10 輸出数量指数
採用指標の特徴
景気動向指数は、上記の一致指数のほか、景気に先行する先行指数、遅行する遅行指数も作成されています。それぞれの特徴を簡単にみてみましょう。
先行指数の特徴をみると、金融市場に関連する指標が多く採用されていることがわかります。日経商品指数、東証株価指数です。これらの金融・商品市場は景気の動きを先取りして動くために先行指数に選ばれています。そのほか、機械受注や中小企業売り上げ見通しなどが採用されています。
一致指数は、有効求人倍率、営業利益など全産業の動きを反映しているものも含まれていますが、景気を敏感に反映する製造業の指標が多く含まれているのが特徴です。生産指数、生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数などがそれに当たります。
遅行指数は、景気に遅れて動く指数ですが、雇用関係の指標が多いのが特徴です。常用雇用指数、完全失業率、きまって支給する給与などです。
採用基準
次に、採用基準について調べてみました。景気動向指数の採用基準については、内閣府が以下のように発表しています。
1.各経済部門を代表する指標を探す。
【考え方】幅広い経済部門
(1)生産 (2)在庫 (3)投資 (4)雇用 (5)消費 (6)企業経営 (7)金融 (8)物価 (9)サービス
2. 景気循環の対応度や景気の山谷との関係等を満たす指標を探す。
【考え方】6つの選定基準
(1)経済的重要性
(2)統計の継続性・信頼性
(3)景気循環の回数との対応度
(4)景気の山谷との時差の安定性
(5)データの平滑度
(6)統計の速報性
3.各経済部門から景気循環との関係を踏まえ選択する。
【考え方】先行(主に需給の変動)、一致(主に生産の調整)、遅行(主に生産能力の調整)
まず、幅広い経済部門から選択するという基準です。9個の分野が選ばれていますが、基準がはっきりしない感じがします。たとえば、GDPの3面等価の考え方でいえば、生産、支出、分配という基準が考えらます。これらの各部門から系列を選ぶ、というのであれば体系的な感じがします。現状の(1)から(9)の指標は、(1)生産(2)在庫という生産関連指標が厚く、通常最後に来る金融や物価が途中にあり、(9)番目にサービスがあったりして、並び方の考え方がよくわかりません。
次に、過去の景気の山谷との関連です。(2)の統計の継続性・信頼性は重要ですが、これを重視しすぎると、最近作成された統計が使えないということになります。サービス産業動向調査や景気ウオッチャー調査などです。また、(6)の速報性は大事です。発表が遅い統計を使ってしまうと、景気動向指数全体の発表が遅くなってしまうためです。
3つ目は、先行、一致、遅行に対する考え方です。景気を早めに知るという意味では先行指数や一致指数は大事ですが、遅行指数は確認するという役割はあるものの、存在意義は大きくないと思います。
バーンズ・アンド・ミッチェル
景気動向指数を考案した、バーンズとミッチェルは景気指数の選択基準として以下の基準を提示している。
<景気指数の選択基準>
・さまざまな条件での景気循環をみるため、系列が50年以上あること
・景気の山谷への先行期間が一定であること。
・滑らかに動いて、山谷がわかりやすいこと。
・系列の動きが景気循環を説明していること。
・過去の動きから、将来が予測できる程度に、景気と関連していること。
(出所)Mitchell and Burns(1961)”Statistical Indicators of Cyclical Revivals”
当初の基準としては、系列が50年以上あること、というものがあります。日本でいえば、1970年くらいからの系列となります。オイルショックやバブル崩壊などで構造変化があったり、輸出比率の大きさが変わったりと、指標が景気に与える影響が変化していることを考えると、少し長い気がします。
景気動向指数の根底の考え方は、「景気という目に見えない流れがあって、それを各指標は反映する。各指標は個別の要因で動くこともあるが、それらを合成することで景気の流れが浮かび上がってくるはずだ」というものです。現在の一致指数採用系列は以下の10変数です。
- C1 生産指数(鉱工業)
- C2 鉱工業用生産財出荷指数
- C3 耐久消費財出荷指数
- C4 労働投入量指数(調査産業計)
- C5 投資財出荷指数(除輸送機械)
- C6 商業販売額(小売業)(前年同月比)
- C7 商業販売額(卸売業)(前年同月比)
- C8 営業利益(全産業)
- C9 有効求人倍率(除学卒)
- C10 輸出数量指数
採用指標の特徴
景気動向指数は、上記の一致指数のほか、景気に先行する先行指数、遅行する遅行指数も作成されています。それぞれの特徴を簡単にみてみましょう。
先行指数の特徴をみると、金融市場に関連する指標が多く採用されていることがわかります。日経商品指数、東証株価指数です。これらの金融・商品市場は景気の動きを先取りして動くために先行指数に選ばれています。そのほか、機械受注や中小企業売り上げ見通しなどが採用されています。
一致指数は、有効求人倍率、営業利益など全産業の動きを反映しているものも含まれていますが、景気を敏感に反映する製造業の指標が多く含まれているのが特徴です。生産指数、生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数などがそれに当たります。
遅行指数は、景気に遅れて動く指数ですが、雇用関係の指標が多いのが特徴です。常用雇用指数、完全失業率、きまって支給する給与などです。
採用基準の課題
次に、採用基準について調べてみました。景気動向指数の採用基準については、内閣府が以下のように発表しています。
1.各経済部門を代表する指標を探す。
【考え方】幅広い経済部門
(1)生産 (2)在庫 (3)投資 (4)雇用 (5)消費 (6)企業経営 (7)金融 (8)物価 (9)サービス
2. 景気循環の対応度や景気の山谷との関係等を満たす指標を探す。
【考え方】6つの選定基準
(1)経済的重要性
(2)統計の継続性・信頼性
(3)景気循環の回数との対応度
(4)景気の山谷との時差の安定性
(5)データの平滑度
(6)統計の速報性
3.各経済部門から景気循環との関係を踏まえ選択する。
【考え方】先行(主に需給の変動)、一致(主に生産の調整)、遅行(主に生産能力の調整)
まず、幅広い経済部門から選択するという基準です。9個の分野が選ばれていますが、基準がはっきりしない感じがします。たとえば、GDPの3面等価の考え方でいえば、生産、支出、分配という基準が考えらます。これらの各部門から系列を選ぶ、というのであれば体系的な感じがします。現状の(1)から(9)の指標は、(1)生産(2)在庫という生産関連指標が厚く、通常最後に来る金融や物価が途中にあり、(9)番目にサービスがあったりして、並び方の考え方がよくわかりません。
次に、過去の景気の山谷との関連です。(2)の統計の継続性・信頼性は重要ですが、これを重視しすぎると、最近作成された統計が使えないということになります。サービス産業動向調査や景気ウオッチャー調査などです。また、(6)の速報性は大事です。発表が遅い統計を使ってしまうと、景気動向指数全体の発表が遅くなってしまうためです。
3つ目は、先行、一致、遅行に対する考え方です。景気を早めに知るという意味では先行指数や一致指数は大事ですが、遅行指数は確認するという役割はあるものの、存在意義は大きくないと思います。
先行指数の先行期間はどの程度か
先行指数は、一致指数に対してどの程度先行しているのでしょうか。時差相関係数で調べてみました。先行指数を前後にずらして、一致指数との相関係数をみるものです。86年1月から2022年8月までの期間で計測したものです。その結果、先行指数が3ヵ月先行している時の相関係数がもっとも高いため、3ヵ月先行しているということがいえます。
ただ、実際のグラフで景気基準日付をみると、最近はかなり早く先行指数が山を迎えています。2018年10月か景気のやまですが、先行指数の山は2013年11月です。かなり早く先行しているといえますが、ここまで早いと、いつ一致指数が山を迎えるのかが分かりにくいです。
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